第6章 流されて異界
第151話 誓約
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だと思う。
「その答えを求める為のすべての依頼をあなたに拒絶された以上――」
やや上目使いに俺の瞳を覗き込みながら、彼女の言葉で。それは非常に拙い、更に言うと抑揚に乏しい彼女独特の話し方で綴られる思いのたけ。
自らの感情の正体が分からない。そう言いながらも、その事に恐れる事なく、真っ直ぐに向き合おうとする彼女は……多分強い。
少なくとも、常に逃げ道を探そうとしている俺に比べるのなら。
「無事に……」
一言、そう言った後、僅かに息継ぎを行う有希。それは自らの感情を落ち着かせる為に必要な間。そして、それに続く言葉を俺に想像させ、魂に刻み込ませる為に必要な時間。
「無事にわたしの元に帰って来て欲しい。それが今のわたしに残された最後の願い」
小さな右手が俺の胸……心臓の位置に触れながら、そう言葉を締め括る有希。
これは誓約であり、おそらく呪。元々、俺が交わす約束と言う物にはある程度の呪が籠められている。
願わくは、この誓約がループする時間の終わりの始まりであらんことを。今の俺に取って、願いを祈る相手……神はいないが、それでも、何か。普通ではない超自然的な何モノかにそう祈らずには居られない。そう感じさせる真摯な願い。
彼女の視線を正面から受け止める俺。多分、今彼女が発した願いは本物。更に言うと、それまで彼女が口にした願いはすべてフェイク。この内容に持って来るまでの道筋。
どう考えても、……何事に対しても慎重な俺が彼女をハルケギニアに連れて行く訳はない。例え、ハルケギニアに彼女が居なかったとしても、彼女の未来をすべて俺の色に染めるのは未だ躊躇いがある。まして、抱いて欲しいなどと言われても、その事に対する責任の取り様がない状態で、その願いを簡単に受け入れるような男なら、彼女がここまでの好意を寄せるとも思えない。
おそらく、据え膳喰わぬわ何とやら、などと言い訳を口にした挙句に彼女を抱いていたのなら、其処に微かな侮蔑と、取り返しの付かない何かを残した可能性の方が高かった。
俺の式神契約に、普通の使い魔契約魔法の使役者に対する服従を強いるような、精神に強く作用する部分はない。つまり、これは強制された主従関係を彼女が愛情だと勘違いしている訳ではない、と言う事。
もっとも、その愛情が、男女間の恋愛感情から来ているのか、家族に対する感情なのかを彼女も掴みかねているような気配も存在しているとは思いますが。
故に、性的な意味で抱いてくれ、と言って、自らの感情の意味を確かめようとしたのだと思いますから。
ここまで事態が進めば考察は容易。しかし、答えは――難しい。
ハルケギニアに帰らない選択肢。これを選べば答えは簡単。彼女の願いはあっさりと達成される。
但し、その場合、おそらく俺
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