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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第151話 誓約
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対に未来が変えられないのなら、この世界は一九九九年七月に始まる異世界からの侵略により、今頃は滅亡の縁に立たされていたはず。
 しかし、現実には俺と有希はこうやって月明かりの下、東北の温泉で互いの瞳を覗き込みながら、会話を続ける。……と言う、日常の延長線上にある非日常。ある意味、クリスマスに相応しい平和な夜を過ごしている。

 ここから世界の終末を感じる事は出来ない。
 ただ――

「これは飽くまでも可能性の問題や」

 自らの腕の中に存在する彼女。その直接触れ合った肌を通じて。かなり否定の色の濃い瞳を自らの瞳で語る事によって理解して貰おうとする俺。
 このままでは、今、俺の腕の中に居る少女の未来が、俺の転生を待ちながら眠り続ける異世界の精霊王へと成りかねないから。
 自らの腕の中に居る少女と、彼方の世界に残して来た少女の姿を持つ水の精霊王を比べる俺。彼女の生き方。今まで過ごして来た時間。

 そして、俺に対する感情。

 確かに……。確かに、それが絶対に不幸な事だとは言えない。
 それまでの……。何の希望もないまま、更に不満を胸に抱きながらも、ただ命令に従い続けた生活に比べるのなら。再会の時を待ちわびながら、眠り続けるのも悪くはない。少なくともそれは、悪夢に(さいな)まれ続ける……などと言う類の眠りではないはずだから。

 言えないのだが、それでも――

「この世界に召喚される前の俺の状況。それについては有希もある程度は知っているはず。それよりも、更に危険な状況が帰ってからの俺には待ち構えている……と考える方が妥当やと思う」

 それでなければ、わざわざ俺を一度、異世界に追放するような真似を奴らはしないと思うから。そして、殺さなければ俺は間違いなくハルケギニアに戻って来る。
 奴ら……少なくとも這い寄る混沌に取っては、然したる目的もなく、ただ世界を混乱させる為だけに、ハルケギニアやこの世界で暗躍しているに過ぎない……のだと思う。その世界を混乱させるには、一方のみ。例えばハルケギニアの例でいうのなら、何の意図があってそう言う目的に向かって突き進んでいるのか定かではないが、世界を虚無へと沈めて終おうと画策している連中だけが強いのでは面白味がない。外から眺めているだけならば、争っている戦力は拮抗している方が面白いに決まっているから。
 おそらく、今、俺がこの世界に追放されている理由は、有希の望みを叶える為などではなく、その拮抗した戦力、状況を作ろうとしているだけ、なのでしょう。

 どう考えても俺はバランス・ブレイカー。デウス・エクス・マキナとも言えるかも知れない。故に、牛種の連中は、俺や仙界がこの世界(ハルケギニア)に関わる事を認める代わりに、俺の首に鈴を付ける為に神話の再現と言う方法を使って、すべてが終わ
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