STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「後編」
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【1】
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!
時空を消失した亡霊の館。
その内部で恐怖の余り両膝を付く少女を、
この世ならざる隻腕の男が見据えている。
主観的にも客観的にも、終極以外の何モノでもない光景。
極限の状況に呑まれ精神が平衡を失ったのか、
少女は震える笑みを浮かべて死せるその男、
吉良 吉影に問いかけた。
「……わ、私を……一体……“どうするつもりですか……?”
取り憑いて、躰を乗っ取るんですか……?
それとも……呪い殺す、つもりですか……?」
半ば諦観にも近い心情で、
助かりたいというよりは “終わって欲しい”
という思考の元少女は掠れた声を絞り出す。
その様子を見据えた吉良は、細い顎を傾け剣呑な表情で返した。
「何か “勘違い” しているようだが……
『私は君に何もしない』
今言われたようなコトは出来ないし、
第一死人の私よりは生きている君の方が 「強い」 からね」
幽霊にも矜持はあるのか、そんな風に想われるのは心外だというように
吉良は肩を竦めてみせた。
「それに、この 「場所」 を見つけられたのも、此処に入る事が出来たのも、
それは君自身が持っている 「才能」 に拠るモノだ。
私は確かに幽霊だが “怨霊” じゃないから
誰かを誘き寄せたり呪ったりする事は出来ない。
何しろ自分の 「名前」 以外記憶がないのでね」
吉良はそう言うと足下に転がっていた少女の鞄を拾い上げ、
表面に付着した埃を丁寧に払った。
「本当に、怖がらせてすまなかったね。
最初から 『真実』 を包み隠さず話せば良かった。
久しぶりのお客が君のような可愛らしいお嬢さんだったから、
「普通の店」 と勘違いしたままならそれが一番良いと想ったんだ」
隻腕の青年はそう言って優しく微笑み、鞄を自分に差し出してきた。
「……」
告げられた言葉と穏やかな声に、少女の恐怖も若干和らいだのか無言で鞄を受け取る。
「さぁ、出口はそこだ。
開かなかったり中に戻ってきたりするコトはないから安心するといい。
ほんの少しの間だったけど、久しぶりに楽しかったよ」
吉良はそう言って道を開け、入ってきたドアへと促した。
「……」
本当はすぐにでも駆け出したかったが、
恐怖の余韻が躰に染み着いている為
ガクガクと震える脚を少女はゆっくり引き起こし、
頼りない足取りで出口へと向かう。
そこに。
「ンニャン♪」
再び猫の鳴き声が耳に入り、
次いで脇のカウンターに先刻の植物がピョンと飛び乗った。
「ニャ……ウ……? ニャアァ……ウゥ〜ン……」
そのまま猫草は、仔猫のよ
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