STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「後編」
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い者との永遠の別れに少女は、
言い様のない切なさを感じた。
そし、て。
「――ッッ!!」
異界の空間に舞い散る雫と共に少女は背後を振り返った。
想っていたよりもずっと離れていた、
もう二度と縮まる事のない、二人の距離。
吉良は、少し驚いたような表情でこちらを見ている。
しかしすぐに滲む視界の中、少女は、吉田 一美は、
あらん限りの気持ちを込めて叫んだ。
「吉良さんは!!」
喉の奥底から絞り出すような、激しい感情。
自分が何を言っているのか、言おうとしているのか、解らない。
でも、止まらなかった、止められなかった。
「吉良さんは!! いつかきっと!!
赦される日が来ると想います!!
天国へ行ける時が!! 必ずやってくると想います!!」
何の根拠も確証もない、無責任な言葉。
それでも。それでも……!
「だって!! 私の一番大切な人を想い出させてくれたから!!
何よりも大切な気持ちを取り戻させてくれたから!!」
“私を、救ってくれたから”
「だから、だから、だか、ら……ッ!」
もうそれ以上は、言葉にならなかった。
ただ、嗚咽のような呼気が断続的に口から漏れるだけだった。
「……」
吉良は一度瞳を閉じて少し頷くと、真正面から少女を見つめた。
「ありがとう。君は、本当に優しい子だね」
そう言って、その美貌に相応しい優しげな笑顔を返した。
「さようなら、吉田 一美さん。君の事は、決して忘れないよ」
隻腕を上げながら微笑む死者の青年の肩で、
猫 草が葉を振っている。
その光景を眼に焼き付けながら、少女は一歩二歩と後退った。
そして渦巻く胸の裡を押し殺すように踵を返し、眼を瞑って駆け出した。
そうしなければ、永遠に此処から離れられないような気がした。
涙で滲む異界の通路を、少女はただがむしゃらに走る。
何で。
何でこんなに、淋しいんだろう?
何でこんなに、哀しいんだろう?
おそらく、解答はどこにもない。
コレは、どうしようもない、変えようがない
『運命』 に対する気持ち。
だからきっと、こんなに苦しいんだ。
(――ッッ!!)
やがて視界を覆い尽くす眩い閃光。
一度躰の深奥がズレるような感覚。
周囲を取り巻く耳慣れた喧噪と共に、
自分が元の世界に戻ってきたのだと認識した。
すぐ脇にはコンビニがあり隣には薬屋がある。
でももう 『その間』 に道は無い。
何もかもが常軌を逸していて、白昼夢でも視ていたような気さえする。
しかしソレが確かなる 『現実』 で在ったコトを、もう少女は疑わなかった。
二度といけない世界。
永遠に逢えない人。
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