STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「後編」
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スベテ、想い出した。
意識が虚ろでも、魂が覚えていた。
或いは、心の中の 『もう一人の自分』 が。
何で、何で、忘れてたんだろう?
何で、諦めようなんて想ったんだろう?
こんなに、こんなに、想われていたのに。
全身ズタボロの躯で、命の危険を冒してまで、自分を護ってくれたのに。
何よりも遠い世界にいると想った彼を、今はこんなに近くに感じる事が出来る。
どれだけ遠く離れていようとも、今ならはきっと追いつく事が出来る。
大丈夫、まだ間に合う。
だから、彼が自分を護ってくれたように、今度は私が。
“空条……君……”
嬉しさと切なさで溢れ返る胸の裡で、
少女は “その者” の名を祈るように呟いた。
【3】
現世と幽世の 『境界線』 に斜陽が降り注ぐ。
その狭間を漂う方舟の前に佇む、生者と死者。
永久の別れを前に、死人の青年が静かに口を開いた。
「さぁ、行きなさい。 『君が往くべき道へ』
寄り道をせず此処に来た通り戻れば、元の場所へ帰れる筈だ。
決して、こちらを振り向いてはいけないよ」
「え?」
「フフ、特に深い意味はないよ」
瞳を見開く少女に、吉良は澄んだ表情で微笑った。
「もう、逢えないんですか? もう、此処に来ても……」
色々と怖い想いもしたけれど、それでも親身になって接してくれた
死界の美青年に少女は問いかける。
吉良は変わらぬ表情で、でも少しだけ瞳を伏せて言った。
「そうだね。そう想った方が良い。
私はもう既に死んでいる人間で、
君は 『これからを』 未来を生きる人間だ。
忘れ去られた死者のコトは、余り胸に留めない方が良い」
「……」
押し黙る少女に、吉良も無言で応じた。
じきに、「役目」を終えたこの場所は、また他の時代へと転移する。
遠い過去か、未来か、或いは全く別の世界か。
それでも此処を訪れる者を待ち続けるのが
自分の 『仕事』 であり、
永劫の刻の中に差す微かな希望だった。
「さよなら、猫ちゃん」
自分の肩に留まった猫草を、少女が名残惜しそうに撫でる。
猫草の方も同様に、悲しげな鳴き声を上げた。
「本当に、色々、ありがとうございました」
最後に少女は深く頭を下げ、下校の寄り道と呼ぶには余りにも奇妙な場所に背を向けた。
吉良は、何も言わなかった。
でも、少女は自分の姿が見えなくなるまで、
彼が送別してくれているのを背後に感じた。
「……」
少しずつ、速まる歩調。
口唇をきつく噛み締めていなければ、零れ落ちてしまいそうになる無数の感情。
理由は解らない、解らないが、逢って間もない、
もうこの世には存在しな
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