STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「後編」
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なく精密に疵口の中を動いている。
長い時間を要する事もなく少女の躰から抜き出された矢は、
そのまま鈍い金属音を立てて床の上に転がった。
不思議な事に、鏃には一滴の血も付いておらず、
貫かれた少女の左胸にも目立った外傷は見当たらない。
「君ッ! 大丈夫なのか!?」
幽霊でありながらその光景に見入っていた吉良は、
我を取り戻したように片腕の少女へ呼び掛けた。
「……ぃ…………た」
「え?」
消え去るような声に問い返した直後。
「想い……だし……ました……」
少女の瞳が静かに閉じ、透明で温かな雫が頬を濡らした。
正直、何が在ったのかは解らない。
でも、確かな実感がある。
アノ 『矢』 に貫かれた衝撃が、心の中を覆う紅い靄をスベテ取り去ってくれた。
どれだけ望んでも、必死になっても、決して届かなかった記憶の淵。
「ずっと……一緒、だったのね……ずっと、護って、くれてたのね……」
閉じた瞳の中に浮かぶ、一人の勇壮なる青年。
何も言わなかったけれど、背を向けて行ってしまったけれど、
自分を傷つけない為に、恐ろしい事へ巻き込まない為に、
全部一人で背負ってくれてたんだ。
「ありがとう……ありが……とう……」
小さくそう呟きながら、少女は甦った 「記憶」 を反芻していた。
大切なものを包み込むように。
何度も、何度も。
鮮やかに甦る、追憶の奔流の中。
このオレ、空条 承太郎は、いわゆる「不良」のレッテルをはられている……!
こんなオレにも!吐き気のする「悪」はわかる!!
この女をキズつけはしねーさッ!
こいつの相手はオレがするッ!
『オレのを』使え。
キサマがやったのはソレだ!! ア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンッッ?!
裁くのはッッ!! オレのッッ!!
スタンドだあぁぁぁぁ―――――――ッッッッ!!!!
敗者が「悪」か! それはやっぱり!
待ちな!
今、おまえの中にいるスタンドを引きづり出してやるぜ……ッ!
そいつを攻撃すんじゃあねー!
だからッ!オレが裁く!!
「悪」とは!! テメー自身のためだけに!!
弱者を利用し踏みつけるやつのことだッッ!!
心の中で絶え間なく響く、その人の声、気高き精神。
そう。
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