STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「後編」
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うに自分の肩へと飛び移り
拭く事も忘れていた頬をペロペロと舐めた。
(猫ちゃん……)
この植物もまた異形のモノなので、
反射的に払いのけようとする気持ちがなかったわけではないが、
でも本当に普通の猫のように哀しげな声で鳴くので
恐怖と共にその気持ちは霧散した。
「大丈夫……よ……またちょっと、驚いただけ……
もう、平気だから。だから、泣かないで」
そう言って少女は、涙の滲んだ瞳でそっと肩の猫草を優しく撫ぜた。
「ンニャ♪ ニャ♪ ニャニャン♪ ニャアア〜ン♪」
「わっ、ちょっと、くすぐったいわ。そんなに舐めないで」
その二人の様子を意外そうな面持ちでみつめていた吉良は、
口元に微笑を浮かべ一度首を左右に振った。
【2】
「ずっとお一人で、この場所にいるのですか?」
「あぁ、もうどれほどの時が経ったのか解らないくらい、ずっとね。えぇっと」
「あ、吉田 一美です。名乗るのが遅れてすいません」
「イヤイヤ、御丁寧にどうも」
紆余曲折あったが結局店に留まる事を選択した少女は、
窓際のティーテーブルで男と向かい合っていた。
何故そうしようとしたのかは、正直自分でもよく解らない。
ただ、店主の吉良は真摯に応対こそすれ自分に
危害を加えるような事は一切していないし、
嫌な記憶をそのままにしたくないという気持ちもあった。
何より。
「ニャアァ〜ン♪」
件の猫草が自分の肩から離れなくなってしまったので、
再び眠りにつくまで逗留を余儀なくされたというのが本当の所だ。
目の前にはパールのように光るティーカップとソーサーが置かれている。
「さっき、このお店のスベテが “幽霊” だと仰いましたが、
もしかしてこの紅茶も “そう” なんですか?
ティーカップも、立ち上る湯気さえも?」
吉良が優美な仕草で淹れてくれた紅茶を手に取り、
ベルガモットの香りを漂わせる澄んだ液体を前に少女は小首を傾げた。
「あぁ、だが幽霊とは言っても別に口の中で動き回ったり
鳴き声をあげるわけじゃないから安心したまえ。
物のイメージがそのまま 「固定化」 しているだけなんだ。
無論、気が進まなければ無理はしない方が良いが」
「あ、いえ、いただきます」
吉良が気分を落ち着ける為にとわざわざ淹れてくれたものなので、
その好意を無碍にしない少女は上品な装飾の入ったカップを口に運ぶ。
「――ッ!」
不思議な、紅茶だった。
口の中に広がる味と鼻腔に抜ける香りは
これまでに味わった事が無いほど高貴だったが、
その温かな液体は喉元を通り過ぎる寸前にスッと消えた。
呆気に取られたようにカップを見つめていると、
瞬きの間に紅茶の量は元に戻っている。
味も香りも確かにするが
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