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SAO〜円卓の騎士達〜
第六十二話 助けた物
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るかもしれない。 でも俺は、どうしてもそのままにしておけなかったんだ。 だから直接郵便局まで行って、ある人の連絡先を教えてくれないか、って聞いてきたんだ。」
詞乃「会うべき、人、聞くべき言葉?」

呆然と繰り返す詩乃の両隣、そこに座っていた俺とシンタローが立ち上がり、店の奥に見えるドアへ歩いて行った。
《PRIVATE》の札が下がるドアが開けられると、その奥から、三十代くらいの女性と、まだ小学生に入る前だと思われる女の子が歩み出て来た。
顔と雰囲気がよく似ている、きっと親子なのだろう。
でも、詩乃の戸惑いは深まるばかりだ。
なぜなら、親子が誰なのか。 詩乃には解らなかったからだ。
女性は、呆然と座ったままの詩乃を見ると、何故か泣き笑いを思わせる表情を浮かべて、深々と一礼した。
隣の女の子もぺこりと頭を下げる。
その後、俺に促され、親子は詩乃の座るテーブルの前までやってきた。
龍也と桜が椅子から立ち上がり、詩乃の正面に女性を、その隣に女の子を掛けさせる。
カウンターの奥から、今まで沈黙を守っていたエギルが静かにやって来て、二人に飲み物を出した。
こうして間近で見ても、やはり誰だか解らない。
なぜ拓真は、この親子が《会うべき人》だと言ったのだろうか?
いや、どこか記憶のずっと深い所で、何かが引っかかる気がした。
すると、女性が深々と一礼した。
続けて、微かに震えを帯びた声で名乗る。

「はじめまして。 朝田……詩乃さん、ですね? 私は、大澤祥恵と申します。 この子は瑞恵、四歳です」

名前にも、やはり聞き覚えがなかった。
挨拶を返すことが出来ず、ただ眼を見開き続ける詩乃に向かって、祥恵という母親は大きく一度息を吸ってから、はっきりした声で言った。

「私が東京に越してきたのは、この子が産まれてからです。 それまでは、***市で働いていました。 職場は、町三丁目郵便局です。」
詞乃「あ、」

詩乃の唇から、微かな声が漏れた。
それは、その郵便局は、五年前の事件があった、小さな町の郵便局。
彼女は事件当時、郵便局で働いていた職員の一人だ。
つまり、俺と和人、明日奈と龍也、桜は、昨日学校を休んであの郵便局に行った。
そして、既に職を辞し、東京に引っ越していたこの女性の現住所を調べ、連絡し、今日この場で詩乃と引き合わせた。
詩乃はそこまでは理解できた。 しかし最大の疑問は残っている。
なぜ学校を休んでまでそんなことを?

「ごめんなさい。 ごめんなさいね、詩乃さん。 私、もっと早く、あなたにお会いしなきゃいけなかったのに。 あの事件のこと、忘れたくて、夫が転勤になったことをいいことに、そのまま東京に出てきてしまって。 あなたが、ずっと苦しんでい
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