第六十話 死闘開始
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迫ってくる方向には眼を向けていない。
これは、私を信頼してくれている証。
私はその信頼に、精一杯答えたい。
闇風はシンタローを狙う瞬間に、一度制止するはず。
思考を完全に止め、全存在がへカートと一体化し、集中力を極限まで高める。
視界に映し出されたのは、疾駆するターゲットと、その心臓を追い続ける十字のレティクルのみ。
その状態で、どれだけの時間が経過したのかさえ解らなかった。
そして、その瞬間が訪れた。
視界の端を、白い光が右下から左上へと横切った。
銃弾。
へカートのものではない。
死銃が放った銃弾だ。
それをシンタローが回避し、西側から接近する闇風の元に届いたのだ。
闇風も、突如銃弾が飛来するとは予想出来ていなかった為、その場で身を屈めて制動をかけ、次いで岩陰へと方向転換しようとした。
これが、最初で最後のチャンスだ。
シノン(今だ!!)
指がトリガーを引き始める。
視界に薄緑色の《着弾予測円》が表示され、それが一瞬で極小のドットまで縮小し、胸の中央をポイントさせる。
トリガーを完全に絞り、巨大な50BMG弾の装薬がチャンバー内で炸裂、弾頭を瞬時に超音速まで加速させ、――撃ち出した。
へカートのマズルフラッシュに気付いた闇風の両眼と、右の瞳が、スコープ越しに衝突する。
驚きと悔しさ、それに確かな賞賛の色を見た気がした。
直後。 闇風の胸に、眩いライトエフェクトが弾けた。
アバターは数メートル以上吹き飛ばされ、砂の上を数度転がり、腹部に【DEAD】の文字が回転を始めようとした時には、私はへカートごと身体の向きを百八十度変えた。
其処には、さっきの銃弾を躱したシンタローが一直線に疾駆する姿が映った。
次いで、行く先でオレンジ色の光が瞬いた。
シンタローは飛来した銃弾を光剣で弾き飛ばし、回避を繰り返して、視線の先に映っていると思われる死銃に接近している。
接近するのは、距離が縮まるほど困難を極める。
私はスコープの暗視モードを切ると、同時に倍率を限界まで上げ、銃弾の発射位置を捉えた。
――大きなサボテンの下。 布地の下から突き出す特徴的な減音器の付いた銃、《サイレント・アサシン》。
そして其処には、死銃の姿。
その姿を見た途端、湧き上がろうとする恐怖に、右眼を見開いたまま抗った。
シノン(お前は亡霊じゃない。 《ソードアート・オンライン》の中で沢山の人を殺し、現実世界に戻って来ても、こんな恐ろしい計画を企む精神の持ち主であっても、生きて呼吸し、心臓を脈打たせてる人間だ。)
――戦える。
死銃に十字レティクルを合わせ、トリガーを絞る。
瞬間、死銃の頭がピクリと動いた。
恐らく、闇風を銃撃した
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