第五十三話 事件の予感
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菊岡は、何時もの笑顔に戻っていた。
菊岡「実はね、上の方が気にしているんだよね。 フルダイブ技術が現実に及ぼす影響というのは、今や各分野で最も注目される分野だ。 仮想世界が、はたして人間の有り方をどのように変えていくのか、とね。 もし仮に、何らかの危険がある、という結論が出れば、再び法規制を掛けようという動きが出てくるだろう。 だが僕たち《仮想課》は、この流れを後退させるべきないと考えている。 VRMMOを楽しむ、君たち新時代の若者の為にもね。 そんなわけで、規制推進派に利用される前に把握しておきたいのさ。 そして対処も出来るように完璧にしておきたいね。 こんなところで、どうかね??」
俺達は長く沈黙した。
菊岡は焦るように言葉を発した。
菊岡「も、もちろん万が一の事を考えて、最大限の安全措置は取らせて貰うよ。 こちらが用意する部屋からダイブして貰って、モニターもする。 アミュスフィアの出力に、何らかの異常があった場合はすぐに切断する。 銃撃されろとは言わない。 君たちから見た印象で判断してくれればいい。 行ってくれないかね??」
ゆっくり俺が口を開いた。
和人「どうする?」
シンタロー「菊岡さん。 ただリサーチするだけでいいんだよな?」
菊岡「そうだとも。 報酬も支払うよ一人につき、これだけ出そうじゃないか。」
菊岡は指を三本立てた。
正確には、三十万。
再び長い沈黙。
和人「わかった。 俺は行こう。」
シンタロー「俺もだ。」
拓真「右に同じ。 安全は確保するんだろうな。」
菊岡「大丈夫。 そこは安心してくれたまえ。 君たちの安全は保障するよ。」
菊岡は思い付いたように手を打ってから、イヤホンを取り出し、
菊岡「音声ログを圧縮して持って来ているんだ。 これが《死銃》氏の声だよ。 どうぞ、聴いてくれたまえ。」
俺達はイヤホンを耳に入れ、菊岡が液晶画面を突くと、ざわざわと喧騒が再生される。
それが突然消失し、張り詰めた沈黙を、鋭い宣言が切り裂いた。
『これが本当の力、強さだ! 愚か者どもよ、この名を恐怖と共に切り刻め。 俺と、この銃の名は《死銃》、《デス・ガン》だ!!』
何処か非人間的な、金属音を帯びた声だった。
その声はロールプレイでは無く、殺戮を欲する本当の衝動を放射しているように思えた。
菊岡「それと最後に追加の情報だ。 その《死銃》氏の近くにはいつも二人のプレイヤーがいるらしい。 どちらも誰だかは分からないがね。」
〜side out〜
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