第五十一話 帰還
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えに。」
ユイ「はい。 パパ、大好きです!!」
うっすらと涙を滲ませ、力いっぱい抱き付くユイの頭を優しく撫でながら、左手を振った。
この世界はどうなってしまうのだろうか。
ALOプレイヤーたちが愛した世界は。
俺は、ユイの頬に軽く唇を当て、ゆっくりとログアウトボタンに触れた。
放射状の光が視界に広がり、意識を包んで、高く運び去っていった。
頭の芯に深い疲労感を覚えながら瞼を開けると、目の前に直葉の顔があった。
心配そうな表情で俺の顔を覗き込んでいたが、目が合うと慌てたように体を起こした。
俺もナーブギアを外し、ゆっくりと上体を起こす。
直葉「ご、ごめんね、勝手に部屋に入って。 なかなか戻ってこないから、心配になって、」
和人「遅くなって、ごめんな。」
直葉「全部、終わったの?」
和人「ああ、終わった。 何もかも。 でだ。 俺は今から病院に行くんだが、直葉はどうする?」
直葉「ううん、また今度にするよ。 こんな夜中に大人数で行ったら怒られちゃうでしょ?」
和人「それもそうだな。 じゃあ、行ってくる。」
直葉「うん。 いってらっしゃい。」
病院の駐輪場に自転車を停め、もどかしく俺は入口に走った。
そこで偶然、桜さんとシンタローと合流した。
パーキングを横切り、濃い色のバンと、白い車の間を通り抜けようとした、その時であった。
俺は後ろから走り出て来た人影と、衝突しそうになった。
和人「あ、」
すいません、と言いつつ身を躱そうとした俺の視界を、金属の輝きが横切った。
俺は左腕を上げて、それを受け止めた。
和人「ッ!?」
直後、俺の左腕に鋭い痛みが走った。
咄嗟に上げた左腕に、金属の刃物が少しだけ食い込んでいた。
俺の腕から赤い鮮血が流れ出した。
俺は黒い影を凝視した。
黒いスーツを着た男だ。
次いで、腕に食い込んでいる物を見た。
大ぶりなサバイバルナイフだ。
殆ど囁き声のような、しがわれた声が流れた。
須郷「遅いよ、キリト君。 僕が風邪を引いちゃったらどうするんだよ。」
その声は、キーの高い、粘り気がある声であった。
和人「す、須郷。」
数日前に相対した時は、丁寧に撫で付けられた髪が、激しく乱れている。
尖った顎には、髭の翳が浮き、ネクタイは殆どぶら下がっているだけだ。
左眼は限界まで開かれ、瞳孔が細かく震えているが、右目は小さく縮小したままだ。
サバイバルナイフを携えていない手で、肩のあたりを押さえている。
俺の剣が貫いた場所と、切り裂いたのがまさにその場所だった。
須郷「酷いことをするねぇ、キリト君。 まだ痛覚消えないよ。 まぁ、いい薬が色々あるから
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