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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十六話 焦燥
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っていた……。
帝国の上層部はヴァレンシュタイン司令長官の死、或いは重傷を公表できずにいる。その影響を計りかね、どう取り繕うかで悩んでいる。当然だが後任人事についても積極的に動けずにいる……。二人はそう考えているのだ。
ローエングラム伯はこのままではブラウンシュバイク公に先手を取られる一方で効果的な反撃が出来ないと危惧している。場合によっては反乱軍もこの混乱に乗じかねない、反乱を鎮圧し帝国を護るためには自分が宇宙艦隊司令長官になり全権を握る必要があると考えているのだが……。現状では上手くいっていない。
それにしても、キルヒアイス准将がスパイまがいの行動をしているとは……。穏やかで感じの良い青年だと思っていたけど司令長官の下に行ったのは司令長官を探るためだったらしい。
私に関して言えば、そのような事の要請は一切ない。司令長官は私をローエングラム伯の下に送り出した後は、廊下で会えば挨拶をするくらいだ。穏やかな表情で仕事に慣れたかと聞いてくる。
有り難い話だ、スパイのような真似をしろといわれたら仕事が陰惨なものになってしまうだろう。おかげで私は何の後ろめたさも感じることなく此処にいる事が出来る。
「反乱の鎮圧計画は司令長官が本隊を率い、小官が別働隊を率いる事になっています。閣下、こう言ってはなんですが司令長官の安否が不明な今、早急に体制を整え、鎮圧計画を修正する必要があるのです」
「私もその鎮圧計画については知っている。修正する必要は無かろう」
「!」
「別働隊は卿が指揮する。本隊はヴァレンシュタイン司令長官が指揮、もし司令長官が指揮を取れない場合はメルカッツ提督に指揮を執らせれば良い」
「馬鹿な、それでは」
「待て、馬鹿と言ったか、ローエングラム伯」
「申し訳ありません、軍務尚書。失言でした」
エーレンベルク元帥は不機嫌そうにフンと鼻を鳴らした。
「上位者である卿が別働隊というのが不満のようだが、シャンタウ星域の会戦ではヴァレンシュタイン司令長官は別働隊の指揮を執り卿が本隊を率いた。馬鹿な話ではあるまい」
「……」
「この期に及んで作戦計画を変更すれば反って宇宙艦隊に混乱をもたらすであろう。卿が何を心配しているのか私には分からんな」
エーレンベルク元帥は不機嫌そうな表情を隠そうともしない。
「元帥閣下、ヴァレンシュタイン司令長官は一体どうなっているのです」
「私のところには体調不良で休むと連絡が有った。卿のところには無かったのか?」
「いえ、小官のところにもそれは有りましたが……」
「ならばそうなのであろうよ、心配する事は無い」
エーレンベルク元帥には全く不安を感じさせるようなそぶりはなかった。司令長官は生きている……、この様子ではそうとしか思えない。
「しかしブラ
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