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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十六話 焦燥
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無用な心配は止せと」
ルーディッゲ提督の言葉に皆が笑い出した。
「卿は辛辣だな」
「このようなときに権力掌握に血眼になるなど不愉快なだけだ。そうではないか、リンテレン提督」
「まあ、ルーディッゲ提督の気持ちは分かるし同感だが……、オーディンでは何が起きたと思いますか?」
「それだがなルックナー提督、おそらく暗殺事件があったのは事実だろう」
「……」
「だが、その暗殺事件は成功してはいまい。成功したならメルカッツ提督が宇宙艦隊司令長官になっている。それが無いという事は負傷したが生きている、或いは……」
「或いは?」
「死んだ振りをしている、そんなところだろうな、ルックナー提督」
「なるほど、有りそうですな、司令長官なら」
「まあ、なるようにしかならん。我等フェザーン方面軍は当初の予定通り行動する」
「はっ」
ルックナー、リンテレン、ルーディッゲ提督が私に敬礼する。生きていて欲しい、切実にそう思った。内乱がついに始まった、海千山千のフェザーン、反乱軍を相手にするには我々だけでは心許ない。どうしても司令長官の力が必要だ。
帝国暦 487年 11月23日 宇宙艦隊司令部 ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ
「ですから、早急に体勢を整える必要があるのです。このままでは宇宙艦隊は混乱したままです。反乱の鎮圧が出来ません」
「……」
「閣下!」
「ローエングラム伯、私には卿が何を焦っているのか、さっぱり分からんな。卿は一体何をしたいのだ?」
「!」
私の目の前でローエングラム伯と軍務尚書エーレンベルク元帥がTV電話で話し合っている。危機感を露わに訴えるローエングラム伯に対しエーレンベルク元帥は何の感銘も危機感も抱いた様子はない。いたって平然としたものだ。
今日、ブラウンシュバイク公が反乱を起した。帝国全土に流れた公の檄はオーディンに宇宙艦隊司令部に混乱をもたらしている。ヴァレンシュタイン元帥暗殺! その言葉は帝国を宇宙艦隊を震撼させた。
司令長官の生死は分からない。連絡を取ろうと思ってTV電話で呼び出しても出ない。政府はブラウンシュバイク公の檄に対し何の反応も示さなかった。肯定も否定もしていない。その事がさらに混乱を助長している。
ローエングラム伯、いやオーベルシュタイン准将の元にキルヒアイス准将から何度か連絡が有ったらしい。それによればヴァレンシュタイン司令長官の幕僚達も何も知らないらしい。もう夕方になるが何の情報も得られず酷く不安がっているようだ。
ローエングラム伯、そしてオーベルシュタイン准将は司令長官は死んだか重傷を負って軍務には就けない状態にあるのではないかと考えている。今朝、宇宙艦隊司令部の近くに撃破された地上車があった。おそらく司令長官はそれに乗
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