第三十九話 手懸かり
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ろしくお願いします。」
須郷「こちらこそ、よろしく。」
この会話が終わった後、俺と須郷は手を離した。
須郷は、彰三氏に向き直った。
須郷「社長、あの件のことなんですが、来月にでも、正式にお話しを決めさせて頂きたいと思います。」
彰三「そうか。 しかし、君はいいのかね? まだ若いんだ、新しい人生だって、」
須郷「僕の心は昔から決まっています。 明日奈さんが、今の美しい姿でいる間に、ドレスを着せてあげたいのです。」
彰三「そうだな。 そろそろ覚悟を決める時期かもしれないな。」
何の話をしているんだ?
あの件って何のことだ?
彰三「では、私は失礼させてもらうよ。 和人君、直葉君、桜君、また会おう。」
一つ頷いてから、彰三氏は大柄な体を翻し、ドアへと向かい病室から出て行った。
後には、俺達と須郷が残された。
俺は須郷の本当の顔を見た。
細い眼からは、やや小さい瞳孔が三白眼気味に覗き、口の両端を上げて笑うその表情は、酷薄という以外に表現する言葉を持たない奴であったのだ。
これがこいつの本性か。
須郷「桐ケ谷君。 確か君はゲーム内では明日菜と結婚していたんだってね。 それが本当なら君と私は少しややこしい関係と言うことになるだろう。 ところでさっき私が彰三さんと話していた、話の内容を知りたくないかい。」
須郷はニヤニヤ笑いながら言った。
和人「ああ。」
須郷「僕と明日奈が結婚するという話だよ。」
俺はその言葉に怒りを覚えたが、それを何とか抑え、言った。
和人「出来るはずないだろう。 明日奈の意思確認が必要だ。」
須郷「確かに、この状況では意思確認が取れないゆえに法的入籍は出来ない。 書類上は僕が結城家の養子に入ることになる。 実のところ、この娘は、昔から僕のことを嫌っていてね。」
須郷は明日奈が眠っているベットの隣まで移動し、左手の人差し指を明日奈の頬に這わせた。
須郷「親たちはそれを知らないが、いざ結婚となれば拒絶される可能性が高いと思っていた。 だからね、この状況は僕にとって非常に都合がいい。 当分眠っていて欲しいね。」
須郷の指が明日奈の唇に近づいていく。
和人「止めろ。 お前、明日奈の昏睡状態を利用する気なのか。」
『覇気』で牽制しながら静かに、それでも出来るだけ怒りをのせて言った。
須郷はすぐに手を引っ込めたが、俺の質問にこう答えた。
須郷「利用? いいや、正当な権利だよ。 ねぇ桐ケ谷君。 SAOを開発した《アーガス》がその後どうなったか知っているかい?」
和人「解散したと聞いた。」
須郷「うん。 開発費に加えて事件の補償で莫大な負債を抱えて、会社は消滅。 SAOサーバーの
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