第三百六十六話
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第三百六十六話 一瞬で
博士は小田切君にさらに話した。
「八条百貨店のステーキハウスじゃったな」
「はい、七階の」
小田切君も答える。
「あそこです」
「では店の前にじゃ」
「行きたいと思えばですか」
「それこそ一瞬でじゃ」
まさにというのだ。
「行けるからのう」
「本当に一瞬ですか」
「ワープして行ける」
「じゃあ願うだけで」
その場所に行きたいとだ。
「それだけでいいんですね」
「その通りじゃ」
「つくづく凄いですね」
「そうじゃろ、わしの発明だからのう」
それだけにというのだ。
「凄くて当然じゃ」
博士は胸を張って言い切った。
「だから安心して使うのじゃ」
「博士がご自身で使われて」
「ちょっとロンドンまで行っておった」
そうしていたというのだ。
「そしてティータイムを楽しんでおった」
「ああ、そういえばね」
「博士三時いなかったな」
タロとライゾウもこのことに気付いた。
「そういえばね」
「それですぐに帰ってきた」
ティータイムの後でというのだ。
「後で何の影響もなかったぞ」
「行き来の時もですね」
「うむ、何もなかった」
小田切君にはっきりと答えた。
「だから安心して使うのじゃ」
「それじゃあそうさせてもらいますね」
「遠慮なくな」
「今から使わせてもらいます」
小田切君は博士とタロ、ライゾウが手を振ってまた明日とお別れの挨拶をする中でベルトの前の部分に手を添えた、ここで博士は言った。
「付けたら念じるだけでいいぞ」
「じゃあそれだけで」
実際に念じてみた、するとまさに一瞬でだった。
ステーキハウスの前まで来た、ここ小田切君が最初に思ったことはというと。
「靴を履いてきてよかったな」
外だからである。
「いや、よかったよかった」
「あの、お客様」
店の前に丁度いたお店のウェイトレスさんが声をかけてきた。
「ご来店ですか」
「はい、食べ放題飲み放題でお願いします」
「わかりました」
ウェイトレスさんも応えてお店の中に案内してくれた、こうして小田切君は肉を好きなだけ食べることとなった。
第三百六十六話 完
2016・8・4
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