第30話『部長』
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訳だ」
「いや、彼らには『準備』を色々と手伝って貰ったし、アンタの敵じゃないと言えばそれは間違いかしら」
「『準備』?」
「そう『準備』。このゴム手袋もその一部だけど、もっと大きい『準備』を、ね」
もったいぶるように茜原は言う。終夜は、それが示すのは自分を苦しめる道具だと判断し、探りを入れ始める。
「その準備とやらは、もう終わってる訳か?」
「ええ。ポチッとすればすぐにでも」
その表現を聞いた終夜は1つの仮説をたてる。
それは、彼女が用意したのは『機械』だということだ。
完全に推測なのだが、「ポチッと」と言った辺り、何らかの装置の起動を意味しているはず。そして、それで撃沈させる算段なのだろう。
「面白ぇ。だったらさっさとやってみやがれ」
「すぐに切り札を切るのはもったいないじゃない。まずはじっくり楽しみましょ」
横目で時計を確認。残り時間は40分余りだ。
それを知った終夜は指をポキポキと鳴らし、拳を突き出して高らかに叫んだ。
「手加減してっと、後悔すんぜ!」
*
「はぁ…はぁ…」
廊下の壁に手をついて休むのは、初めてではない。
もうかれこれ10分は走っているのだが、仲間どころか敵さえ見当たらない始末だ。
だからこんな無防備に呼吸していても、狙われる事なんて無かった。
「暁君、副部長、どこ…?!」
探し相手の名前を呟きながら、また走りを再開する。
廊下の端から端、階段の上から下・・・普段運動をしない俺にとっては、過酷を極めた。
「やばっ、そろそろ横腹が…」
長距離走るとよく起こる横腹の痛み。それが起こった俺は、涙目になりながらも走りを続行する。
だがついに、その努力は報われた──
「はぁ。さっきの子の耳ってホントどうなってんだろ…?」
「……副部長!」
階段の踊り場。上から降りてきた俺に対し、下から上ってきたのは副部長だった。
ブツブツと何かを言っているようだが、そんな事はお構い無し。俺はすぐさま本題を切り出した。
「…三浦? どうしたの、そんなに息を切らして・・・」
「部長が大変なんです! 一緒に来てくれませんか?!」
部長の名前を出した途端、副部長のキョトンとしていた顔が真顔になる。
「え、あいつが? それってどういう状況なの??」
「科学部です。4人全員で部長の相手をしてるんです!」
「!!」
副部長は驚いた様子を見せ、直後「マズい…」と一言。
きっと茜原さんの存在を知っていて、何らかの思い当たる節が有ったのだろう。
副部長は少しだけ考えた様子を見せると、俺に言った。
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