第30話『部長』
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無理だという条件は揃いまくっていた。
「あら、随分と弱気じゃない。諦めた?」
「んな訳あるかよ。ちょっと状況把握しただけだ。別に俺だけで勝てる」
強がりにも聞こえてしまう発言をしてしまったが、茜原に特に言及される事はなかった。そんな中、終夜は科学部の部員を1人ずつ見定める。
茜原以外は男が2人で女が1人。男女1:1で都合が良さそうな組み合わせだが、比較的非力な女子が突破口である事は確実。
直後、終夜はゆっくりと一歩を踏み出した。
「…向かってくるのね」
さっきの落とし穴みたいな仕掛けが無いとは限らない。相手から目をそらさず、かつ一歩一歩床を踏みしめながら進む。
『石橋を叩いて渡る』。まさにそれを具現化したのが、今の終夜だ。
「……」
終夜が向かってくるのに対して、茜原は身構える。距離にして、残り3m。
しかしその頭には何か考えが有るのか、彼女は焦った様子は見せなかった。
だが、終夜にも考えはある。
科学部の4人の位置関係だが、まず茜原が終夜がいる入り口から最も距離が離れた所に立っており、男子2人が茜原の傍、残りの女子がさらにその隣に立っている。
つまり狙いは必然、その女子からだ。
──刹那。終夜が跳んだ。
「おらぁっ!!」
立ち幅跳びの要領だ。ゆっくり歩いていた状態から、急に飛びかかる。当然、いきなりのその挙動に彼女らは反応できない。
4人の眼前に着地した終夜は、右手に夜雷を纏わせ、瞬時にターゲットの女子の肩を軽く叩く。すると、それだけで女子は力を失って倒れた。
次は男子2人。手を伸ばして捕まえようとしてくるので、手が触れた瞬間に電流を流す。これで彼らもダウンした。
やはり、対人にはこれしかない。麻痺なら安全に片がつく。
「さて、上手くいった」と、最後に茜原の方を向く終夜。すると彼女もまた、終夜に手を伸ばしている。
呆気ない。その手が触れた瞬間に電流を流せば、きっとミッションクリアとなるだろう。終夜は勝ちを確信した。
──直後、頬に鋭い衝撃が走る。
「いった……おい、ゴム手袋はずるいだろ」
「あら、これくらいの常備は普通だけど」
茜原に殴り飛ばされ、2m程先に倒れた終夜。
そして自身の電撃が効かなかった理由…ゴム手袋を睨み付ける。
「やっぱ一筋縄じゃいかねぇか。でもお前の部下は大したことなかったな。一瞬で片づいたぜ?」
「最初から期待はしてないわよ。だって彼らはただの科学者。戦闘なんてできっこないもの」
「当たり前じゃない」と最後に付け加える茜原。確かに彼女の言うことに間違いはなく、さっきの部員は数合せに過ぎないのだろう。
「始めから敵はお前だけだった
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