第30話『部長』
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「腕が鳴るぜ」
指をポキポキと鳴らしながら、終夜は威嚇する。
しかしその威力は皆無、科学部の4人は怯まずにその様子をじっと見ていた。
「さっさと始めましょうかね」
そう言ったのは、科学部部長の茜原。彼女は余裕の笑みを浮かべると、白衣のポケットから何かを取り出す。
試験管。一目見て分かるのはそれ。でもって二目見て分かったことは・・・
「おいおい。何だよその液体はよ」
終夜はつい弱気な声を出す。それは、彼女の持つ試験管の中に入っている透明な液体を見たからであった。
赤色でも、青色でも、はたまた黄色でもない。水と言われても疑えないような液体がそこにはあったのだ。
「塩酸、と言えば分かるかしら」
「おっかねぇな…」
茜原は試験管を左右に揺らし、液体を吟味するかのようにウットリと眺める。
塩酸といえば、終夜にもわかる。触れれば皮膚を侵すという強酸だ。そんなものに感じ入る様子は、かなり不気味に思えた。
「それはそうと。終夜、あんたの使う雷の原理、教えてくれたりしないかしら。あの子に訊いても無駄だったし」
「それは都合が良いことだ。悪いが、お前には言えないよ」
「幼馴染みでも?」
「幼馴染みでもだ」
心を見透かすくらいの睨み合いが続き、互いにニヤッと口角を上げる。
笑えるようなことがあった訳でもなく、無意識に。
「そう。じゃあ力ずくで聞き出すことにするわ」
「お前の科学脳は物騒なもんだな。大体、何で俺の魔じ・・・雷が気になるんだよ」
「そりゃ、大気から急に雷を生み出すだなんて、そんな科学者の心を擽るような物、知りたくない訳が無いじゃない」
茜原が自分の思惑を説明する中、一瞬の間違いに気づかれなかった事に安堵する終夜。
今は何かの科学だと彼女は考えているが、これが魔術とバレた時、何が起こるかなんて想像がつかない。
きっと、マイナス方向に話が進むのがオチだろうが。
そんな事から終夜もまた、魔術を茜原に話すのを拒んでいた。
「4対1。現実的に考えて、私達の勝利は明白だけど。アンタはどうするの?」
そう訊かれ、割と真剣に悩む終夜。
一気に放電したりして一掃するのは?と考えるが、さすがにそれは怪我が発生すると判断し、却下。
強行突破で一気に感電!も良いかと思うが、そもそもあの塩酸がそれを防ぐ盾の役割を担っており、時間的に猶予を与えてはくれそうにない。却下・・・
「あれ、もしかしてこの場面は他力本願??」
一人でに呟く終夜。彼はこの状況では、自分が集団相手には意外に向かないという事を察した。
手加減しなくて良いのならその逆なのだが、相手は生徒で場所は学校。
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