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雲は遠くて
115章  信也が連載マンガの主人公になる
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分を認める人生、楽しい人生とかを実現するための、
芸術的な生き方をしていこうってね!」

「すてきだわ!ニーチェがすてきというよりも、しんちゃんが、すてきだわ!」

「あっはは。ありがとう、心菜(ここな)ちゃん。でもさあ。ニーチェの言う
『世界のあらゆる価値観は、わたしたちの解釈(かいしゃく)のうちにある』って、
『権力の意志』っていう著書でいっているんだけど、そんなふうに、絶対的な真理や価値観などが、
存在しないとなると、いったい、おれたちは、何を頼りにしたらいいのかって、ふと思うよね」

「うんそうよね。ニヒリズムよね。いっさいが無意味と思えたりするしね、しんちゃん」

「そこで、おれは、思ったんだよ。ニーチェが、同じ時代に生きていた
ロシアの作家のドストエフスキーの『地下室の手記』を読んで、感銘したっていうんだ。
ドストエフスキーといえば、著書の『白痴(はくち)』の中で、主人公に、
『美は世界を(すく)う』という有名な言葉を言わせているんだけどね。
おれなんかも、バンドやったりして、芸術的なことをやっていると、
『美に出会う』とでもいうのかな、そんな瞬間があって、それに、人生のすべてを()けても、
()しくないような、幸福感というのか、充実感というのか、快感かな、愛かな、
神秘的で偉大な何かの力とでもいうのかな、そんなものが、
『美に出会う』とでもいう瞬間を体験することがあるんですよ。
心菜(ここな)ちゃんも、マンガ描いていて、そういう瞬間てあるでしょう!?」

「あります。幸せな瞬間よね。そうよね、それって、美との出会いよね。ぅっふふふ」

「みんなが、芸術家っぽくなれば、そんな『永遠の美』とでも呼ぶような体験ができて、
世の中も、だんだん良くなるような気がするんだけどね。あっははは。
そういえば、美と出会う、そんな幸福感や高揚感っていうのは、若いころの誰かに恋して、
ときめいていたときの感じにも似ってるかな。あっははは」

・・・もう、しんちゃんたら、わたしが、あなたに、こんなに、ときめいているのに・・・

「そうそう、しんちゃんがモデルのマンガの主人公って、こんな感じなんです!
しんちゃんが、(こころよ)く、承諾(しょうだく)してくれるなんて、夢のようにうれしいです!」

 色彩も(あざ)やかなイラストを、青木心菜(ここな)は差し出した。

「すげーぇ、カッコいいじゃん。それに、おれに似てるじゃん!あっははは」

「だって、しんちゃんがモデルのロックバンドのマンガだもん!」

「まあ、よろしくお願いします。心菜ちゃんのマンガで、おれも、バンドも超有名になったりして!」

 ふたりは、明るい声で笑った。

☆参考文献☆別冊宝島・まんがと図解でわか
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