第二十五話 窮地
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だと思っている。このことは前世における日高常備艦隊司令長官を異動させて、東郷平八郎中将を連合艦隊司令長官に抜擢した軍令部の人事理由にも反映されていることだ。
「今後はどうなるのでしょうか?赤城先輩がおっしゃったあの島の攻略作戦を発動することになるのでしょうか?」
「あなたはそれについてどう思う?」
葵の反対質問に大鳳は目をしばたたかせたが、ゆっくりと言った。
「物資の消失は補いようのない損害です。わが軍は今後は攻勢に出る余力はなく、しばらくは近海での制海権維持に手一杯の状況となるでしょう。ですから、とてもミッドウェーまで到達できるような分量はありません・・・。大陸からの補給物資の集積を待つか、自国での物資製造手段を構築するほかありません。」
葵はまたほうっと息を吐いた。先ほど感じたことと今度は正反対の感情が生まれてきていた。自分がこうも身勝手なのだとは思いたくもないが、だからといって感情を抑えることは葵には出来なかった。
「あなたの言うことは正しすぎるわ。でも・・・・。」
「でも?」
「正しいだけでは何にも生まれない・・・・。」
「えっ?」
「そのためにあなた、赤城、そして紀伊を呼んだの。紀伊、そこにいるのでしょう?いいわよ、入ってきても。」
はいと声がして紀伊が入ってきた。すらっとした長身、銀髪に赤い燃えるような髪が見え隠れし、整った顔立ちに灰色の瞳は静かながら意志の強さを宿らせている。次世代艦娘とはこういうものなのかと葵はあらためて紀伊を見直す思いだった。
「急に呼んで悪かったわね。」
「いいえ、とんでもありません。でも、何を・・・・。」
「あなたたちに聞いてみたいことがあってね。」
その時、トントンとドアがノックされた。
「どうぞ。・・・・・これでそろったわね。」
最後はつぶやくように言った葵の言葉が消えないうちに赤城が入ってきた。葵は立ち上がった。3人が一列に並ぶ姿を見ていると、葵は感慨深いものを感じてしまう。ここに、第一世代、第二世代、そして次世代の空母艦娘がそろっていた。前世では絶対に顔をそろえることがなかった3人。それがこの時代にこうして顔をそろえていることが葵には何か運命のようなものに思えて仕方がなかった。
「あなたたちを呼んだのは、先に赤城さんが会議で発言したミッドウェー攻略作戦の是非について忌憚のない意見を聞きたかったからよ。」
3人は顔を見合わせた。
「長門秘書官、陸奥補佐官のいない中で、と思っているのかもしれないけれど、軍令部には軍令部の意向があってね。」
「しかし、それは先日私が梨羽さんと共に軍令部の会議場でお話をしたはずですが――。」
赤城が当惑さを隠し切れずに言う。
「わかっているわよ。私の話を最後まで聞いて。今ここで話そうとしているのは、軍令部でも艦娘首脳でもなく、私とあなたたち3
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