第二十五話 窮地
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は無事だったのだ。
「ひどいですね・・・・。」
大鳳は顔をしかめた。
「犠牲者が少なくて済んだのは本当に良かったです。でも、こうして爆撃の爪痕を残されると、戦争ってとても嫌なものだって改めて思います。もし・・・これが私たちの誰かだったら・・・・・。」
大鳳の言葉に紀伊は思わず首を振っていた。湧き上がりかけたその悪い想像を振り払おうとするかのように。
「でも、大鳳さんは私のずっと前から、深海棲艦との戦いに参加されているのではないですか?」
「私も就役したのは遅かったんです。そうですね・・・今からだいたい半年ほど前のことです。だからまだ慣れなくて・・・・。今も諸先輩方にいろいろ教えていただきながら、過ごしています。」
私と同じだ、と紀伊は思った。もっともそれは紀伊だけの思いかもしれない。他の艦娘たち、とくに榛名、瑞鶴などは紀伊をもう同じ仲間として遜色ないと思っているのだから。
「あ、紀伊さん。大鳳さん。」
宿舎の前に佇んでいた吹雪が二人を見つけて走ってきた。
「吹雪さん。どうされたんですか?」
「お二人を梨羽さんがお呼びです。赤城先輩も一緒にいらっしゃいます。」
二人は顔を見合わせた。
「私たちを?」
「はい。詳しいことは知りませんが、とにかくお呼びしてほしいと・・・・・。」
同時刻、横須賀鎮守府では葵が呉鎮守府提督と極秘で会話をしていた。
「・・・・そうなの、ええ、いいえ、私なら大丈夫。うん、ありがとうね。心配してくれて。あの空襲で軍令部の方も被害を受けてね、私も立て直しに翻弄されているの。結構忙しいのよ。あ、ちょっと待ってね――。」
葵はしばらく耳を澄ませてから、再び言葉をつづけた。
「実は、あなたに相談があるの。ちょっと言葉は悪いけれど、どうも横須賀鎮守府内部に敵へ内通している者がいるらしいの。え?私が!?バカじゃないの!?心外だわ。あ〜そうですか。そんな風に思ってたのね、私だって一応元戦艦よ。一応元連合艦隊総旗艦よ。艦娘たちを裏切るようなまねするわけが――」
葵は椅子をけって立ち上がった。
「今なんて言ったのかしら?BBAの嫉妬っていう聞き捨てならない単語が聞こえたようだけれど?違うわよね?私まだ20代後半だし。こんなに美人――え?違う?何よ、どういうことよ?前世から数えれば100歳越えるって・・・・ふざけんじゃないわよッ!!!もうっ!!!」
向こうで懸命になだめる声が続いた。
「・・・・まぁ、いいわ。あんたとは長い付き合いだからね。今のも冗談の範疇だってことにしとく。話を元に戻すけれど、そんなわけでしばらくは私のアレに連絡してくれないかな、いい?そして重要な機密はよほどのことがない限りは連絡してこないでね。あんたを信頼して任せてあげるから。じゃあね。」
葵は通信を切った。
「・・・・やれやれ。」
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