第二十五話 窮地
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ということになる。
「その通りだ。だから、私個人は沖ノ島攻略作戦における敵の動きは流動的なもので、こちらの動きに合わせた展開だと踏んでいた。だが、今回の空爆はそれとは違う。敵は明らかにこちらの物資集積場を狙ってきている。これを見ろ。」
長門が地図を出した。
「これが鎮守府の全体図だ。」
長門は上に一枚のセロファン紙を重ねた。すると、集積所の位置がくっきりと青く表示された。
「そして今回敵が爆撃した個所だ。」
長門がもう一枚のセロファン紙を重ねる。それを見て大鳳が息をのんだ。物資集積場とほぼ重なる地点に点々と赤色が塗られていた。
「場所が知れなければ、このような精密爆撃は無理だ。」
「はい・・・・。」
「赤城はああいったが、その作戦をとるとらないの是非の前に、裏切者がいる限り、いかなる作戦をとることもできない。このままでは。」
長門は大鳳を見た。
「お前をこの場に呼んだのは他でもない。お前の実直で聡明、そして誠実な人柄を見込んで頼みがある。」
「・・・・・・・・。」
大鳳は長門が言わんとしていることを早くも察し、暗澹とした気持ちになっていた。
大鳳が長門との密談が終わって部屋から出てきたのはそれから30分ほどたった後だった。大鳳がと息を吐きながら、地下壕から重い足取りで地上に戻ってきた。さあっと柔らかな風が吹きつけ、髪を乱していく。
「大鳳さん?」
不意に呼び止められた大鳳はきょろきょろとあたりを見まわした。視線の先に一人の艦娘の姿が移った。
「紀伊さん。何をなさっていたのですか?」
「榛名さんのお見舞いに行ってきました。これから宿舎にいったん帰ってから、後片付けのお手伝いに行こうと思ってます。」
そういえば、と大鳳は思った。自分と紀伊との宿舎は同じ棟で部屋もそれほど遠くはなかったのだと。私もいったん宿舎に帰って梨羽さんに報告書を届けるところです、と大鳳もいい、自然と二人は足をそろえて、同じ道を歩くことになった。
「そういえば、大鳳さんとお話しする機会って、今までなかったですよね。鎮守府も違ってましたし、初めまして、ですよね。」
「はい。こちらこそ初めまして、そしてよろしくお願いします。」
「私、大鳳さんのハリケーンバウ、いいなぁって思ってたんです。かっこいいですし、真似したいなぁって。」
「私のハリケーンバウ、そんなに気になりますか?」
大鳳は首元のバウに手を当てた。
「はい。」
「ありがとうございます。でも、私は紀伊さんの胸元のスカーフ、とっても素敵だと思いますよ。」
二人はお互いの生い立ちを語り合いながら宿舎の前までやってきた。まだいたるところに焼け跡の強い異臭が漂っている。幸い宿舎は炎上したといっても軽微な損害にとどまっていた。屋根に近い部屋の艦娘たちは移動せざるを得なかったが、紀伊と大鳳の部屋
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