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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第二十五話 窮地
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まま座して終わりを迎えるのは私の性に合わない。けれど、あの提案は大きな賭けになるわ。私たち艦娘はおろか、ヤマトそのものをかけた戦いになる。」
「それは、今までも一緒だったのではないのですか?」
と、比叡。その言葉に加賀は首を振った。
「今までは段階を踏んで、一戦ずつ積み重ねをおこなってきたわ。でも、今回のミッドウェー攻略戦はそのステップを完全に無視した乾坤一擲の勝負。しかも場所が場所と来ているわ。」
「前世の大日本帝国海軍の機動部隊が壊滅した場所、ですか。」
紀伊の言葉がかすかな戦慄を伴って病室内を廻った。無敵艦隊とも言われた最強の機動部隊、赤城、加賀、飛龍、蒼龍がそろってミッドウェー海域で撃沈され、多くの熟練搭乗員と稼働機を失ったことで知られている。
「そう。かくいう私もそこで生涯を閉じたの。前世のことであるとはいえ、正直言ってあまりあそこには行きたくはないわ。しかも今度は前世の戦いとは比べ物にならないほどの事態なのだから。」
いつになく加賀は多弁だった。ミッドウェーという言葉が彼女に忌まわしい記憶を呼び覚まさせ、それを少しでも払しょくするためにしていることなのかもしれない。紀伊はそう思っていた。

3日後――。
「やはり裏切者がいる。」
3日後に引き続き行われたごく少数の極秘会議の席上で長門がそう言った。長門、陸奥、そして大鳳の3人だけだった。場所は地下の会議室脇にある防音式の小部屋である。念のためと長門が盗聴装置の確認を事前に行った。それほど極秘を要する話だった。
「陸奥が示したデータがその証拠の一端を指示している。敵は正確に我々の物資集積所のありかを攻撃してきている。内部からの情報がない限り不可能だ。」
「裏切者って、そんな・・・・。」
大鳳が胸に手を当てた。
「前回だけのことならまだ疑心暗鬼の段階だったが、今回の空襲ではっきりした。お前は沖ノ島侵攻作戦の際に鎮守府で留守を守っていたからわからないだろうが、敵はこちらの行動を察知して半包囲体制で待ち構えていた。」
「でも、それは偶然ではないでしょうか?もし私が敵なら、先鋒艦隊は狙わず、本隊を直接攻撃します。逐次陽動兵力を配置して本隊を縦深陣形に誘い込み、完全に沖ノ島に入ったところで、4方から包囲殲滅するんです。」
「そうね、確かにね。」
陸奥は同意した。沖ノ島の敵艦隊の半包囲体制の配置を聞いたときは、こちらの動向が事前に漏れてしまったのだと思い込んでいたが、考えてみればそれよりも有効な戦法である。本隊さえつぶしてしまえば、それより戦力が少ない先鋒部隊などどうにでもなる。まして彼らは本隊よりも敵地にいるのだ。後ろを絶たれたと知った動揺は大きくないだろう。
 とはいえ、敵はこちらの意図を察知していた。そこから推察すると、敵にわたった情報はそこまで詳細なものではなかった
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