第二十五話 窮地
[4/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
うよりも、これから話す言葉に対しての負の思いを吐き出したようだった。
「わかっています。ですから・・・いわゆる片道特攻になります。」
特攻!?紀伊は全身に鳥肌が立つのを感じた。それは紀伊だけではなく、周りの艦娘全員だった。もし、この場に大和、そして矢矧たちがいれば、特に際立った反応を示したに違いない。・・・・前世の因縁という意味で。
「これは『賭け』です。そう言っていただいてもかまいません。ですけれど、このまま座していても状況は何も好転しません。大陸からの物資の補給を待つというのも一つの案ですが、その間にまた深海棲艦側からの攻撃を受けてしまっては元も子もありません。ならばいっそ今余力があるうちに短期決戦を挑んでしまった方がいいと私は思うのです。」
赤城は言うべきことは言ったというように口を閉ざした。そして何か意見があるかと周りを見まわしたが、誰も何も言わない。赤城もそれ以上何も言わず、静かに自分の席に座った。
しんと水を張ったような静けさが会議室を包んだ。
それからしばらくして、横須賀鎮守府内メディカル施設――。
「赤城さんはとんでもないことを言ったわ。」
珍しく加賀が紀伊と一緒に榛名の病室を訪れていた。言葉ではそう言っているが、その中に何か面白がっている響きも含まれている。
「いいえ、赤城さんらしいと榛名は思います。あれはよくご自分でお考えになった上での意見です。加賀さんもそう思っていらっしゃるのではありませんか?」
ベッドに横たわっていた榛名は微笑んで見せた。加賀は不意に顔を赤くしてそっぽを向いた。
「体は大丈夫ですか?」
紀伊が心配そうに尋ねた。
「幸い急所を外れていましたから、静養すれば大丈夫だと軍医妖精は言っていました。」
付き添っていた比叡が答えた。今回の襲撃で高速修復剤の備蓄も減ってしまったため、緊急時以外には使用しないという方針になってしまった。
「比叡お姉様、もう大丈夫ですから、金剛お姉様のところに行ってあげてください。お姉様がいなくては金剛お姉様も心配なさいます。」
「駄目。いくら私でもそれはできません。榛名も大切な妹です。当分は金剛お姉様と霧島と交代で付き添うからね。お姉様もそれは承知されています。」
榛名ははずかしそうにベッドの毛布を鼻まで引き上げた。それをみて紀伊も、そして加賀までも少しだけ表情を緩めた。いつも鉄面皮の彼女がそうした表情を見せたことに皆が驚いた。
「話を戻すけれど。」
皆の視線を浴びた加賀が少し赤くなって咳払いをし、先の話に歩を戻した。
「赤城さんの提案について、今軍令部で協議が行われている最中なの。赤城さんは作戦立案者として葵さんと共に出席しているわ。」
「加賀さんは反対ですか?」
紀伊が尋ねた。その言葉に加賀は、いいえ、反対ではないわとあっさり答えた。
「この
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ