第二十五話 窮地
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だから、私は赤城さんを信じて、最後までついていきます。それだけです。でも、それだけで私には充分なんです。」
「紀伊さん・・・・。」
赤城の頬が心持赤くなった隣でほうっという吐息が聞こえた。大鳳が恥ずかしそうで、それでいて透き通るような笑顔を浮かべている。
「私はバカでした。そうですよね、作戦の是非よりももっともっと大切なことがあるんでした。信じる心・・・仲間を思いやる気持ち・・・それがなくてはいくら完璧な作戦も意味を成しません。反対に困難でどうしようもない戦いであっても信じられる仲間がいるからこそ、できることもあるんですよね。私も・・・・赤城さんを信じてついていきます。」
期せずして3人の手が折り重なった。
「なるほどね。」
葵が立ち上がっていた。
「あなたたちの覚悟や絆は私が思っているよりもずっとずっと強かったのね。その覚悟や絆があれば、困難を可能にすることもできるのかもしれない。東郷元帥たちの想いは・・・・こうやって確かに時代を時空を越えて受け継がれているのね。」
「えっ?」
「長門、陸奥、大和、武蔵には話してしまったけれどね。私も元戦艦なのよ。敷島型4番艦戦艦三笠。」
その言葉を聞いた3人は雷に打たれたかのように飛び上り、一斉に姿勢を正した。
「あ〜〜いいっていいって、そんなの私の性に合わないからさ。それに今は艦娘じゃなくて一軍人、一人の人間なんだから。」
葵が宥めるように両手を振った。
「でも――。」
「それなのに先輩として、あなたたちを試すようなことをしてしまってごめんね。でも、これはゲームじゃないから。本当に命を賭けて戦うことだから。中途半端は許されないから・・・・。」
葵は少し唇を噛んでいたが、すぐに顔を上げた。
「そういう状況だから、改めてみんなの覚悟を知りたかったの。」
「でも、私たちだけでは――。」
「あなたたちは最後に呼んだのよ。他の艦娘たちも少しずつ読んで話を聞いていたの。言葉は違ったけれど、皆同じ思いだったわ。赤城さん、あなたの作戦を支持すると。」
赤城が自分の胸に手を当てた。そこに皆の想いが流れ込んでくるのを確かめ、感じ取ろうというかのように。
「さぁ、行きなさい。ここから先は本当に厳しい戦いになるわ。軍令部については私が責任もって説得するから。あなたたちは自分のやるべきことをやるのよ。」
『はい!』
3人はうなずいた。この瞬間前世における転換点、そしてこの現世においても正念場となるであろうミッドウェー攻略作戦は発動された。
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