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第五十六話その2 交渉は「順調」に進んでいます。
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ろう。
「レイン、なんとかならないの?ファーレンハイトは帝国からの亡命者でしょ?ならそういった記録がどこかに残っている可能性はない?」
ティアナがレイン・フェリルに尋ねたが、レイン・フェリルはかぶりを振った。
「無理です。政府や軍の人事システムにアクセスできれば、入手できるかもしれませんが、それは危険すぎます。」
「そうよね・・・・。」
「いいんです。フィオーナ先輩、ティアナ先輩、レインさん。ありがとうございます。気を使っていただいて。」
淡々とアリシアは言ったが、その胸中はいかばかりかと3人とも胸を痛めていた。彼女は表立ってあまり感情を見せることはないが、その分内面に秘めている感情はかなりの温度なのだとフィオーナ、ティアナたちは知っていた。
「私は一足先に失礼します。オーディンにいるユリア姉にも話をしておかなくては行けませんから。」
アリシアはそう言ったが、帝国方面への通信は秘密保持等の理由から交渉事に必要な公用のものを除き固く禁止されている。今回帝国は交渉事に備えて全く新しい通信システムを導入してきたのだったが、それでもアルゴリズム等を解析されて帝国の通信を傍受されるのを防ぐためだ。
「アリシアをそれとなく気遣ってあげましょう。彼女、無理をしないといいのだけれど・・・。」
フィオーナの言葉にティアナたちはうなずきを返したのだった。
第十三艦隊旗艦ラクシュミ――。
ウィトゲンシュティン中将から呼ばれた4人は中将の司令室で言葉を尽くして止めにかかっていた。これで何度目だろうとアルフレートは思う。ヴィトゲンシュティン中将に最初に呼ばれた時から、何度か日を置いて4人は中将の下に話し合いに来ていたのだった。
「いけません。あなた様も軍属ならお分かりになるはずです。我々は帝国からの亡命者であることは確かですが、それよりも自由惑星同盟の軍属となっていることをお忘れにならないでいただきたい。」
シュタインメッツがいつになく厳しい調子で諫言する。何故こんな調子で話したかというと、ヴィトゲンシュティン中将が開口一番こんなことを言ったことが原因である。
「相談があるわ。言うまでもないでしょうけれど、今自由惑星同盟に来ている不埒な帝国貴族連中に対して報復するチャンスよ。こんな機会はまたとないわ。私たちが第十三艦隊として惑星イオン・ファゼガスにほど近い場所に訓練で集結しているのは好機。軍の上層部にも今回の決定を不満に思っている者はごまんといるわ。その人たちを抱きこんで支持をもらい、第十三艦隊で衛星軌道を包囲して彼奴等を皆殺しにしてくれるのよ。」
彼女は激昂することなくいつもの調子で言ったのだったが、それがかえって不気味だった。本気なのかそれとも冗談なのか、4人の誰一人としてわからなかった。
「そんなことをすれば激怒した帝国が押
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