201部分:第二十七話 紅の毒その五
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第二十七話 紅の毒その五
「ああ、やっぱりな」
「これか」
「ライチか」
皆そのライチを見て言うのだった。赤紫の固い皮が水滴を跳ね返して白い皿の上に置かれている。
「それに杏仁豆腐」
「定番だけれどそれがいいな」
「そうなんだよな」
皆何だかんだで気に入っているようである。
「これがまたな」
「食べやすくてな」
言いながら中華風のスプーンで食べはじめる。そのまろやかな甘さが口の中を支配していく。えも言われぬ感触に覆われていく。
「そうそう、この甘さがなんだよ」
「病み付きになるよな」
「ライチもですね」
ここでまたアフロディーテが言った。彼は自分の手でライチを剥いていた。その赤紫の皮から白いミルク色の実が姿を現わしていた。
「これもまた実に」
「ええ、勿論それもですよ」
「もう最高っていうか」
「やっぱり中国ですよね」
青銅の者達はもう上機嫌であった。
「料理は」
「そりゃギリシアもいいですけれど」
「スウェーデンは」
しかしアフロディーテはここでぽつりと言うのだった。
「如何でしょうか」
「スウェーデンっていうと確か」
「アフロディーテ様の」
「だったよな」
「確かな」
皆顔を見合わせ合ってこのことを思い出したのであった。
「そういえばスウェーデンって言ったら」
「あの最終兵器か?」
「缶詰であるのですが」
アフロディーテ自身も言ってきた。その最終兵器のことを。
「シュールストレミングといいまして」
「げっ、やっぱり」
「それですか」
皆その缶詰の名前を聞いて顔色を一変させた。白銀のミスティ矢アルゴルにしろその顔を強張らせて硬直してしまっているのだった。
「御存知でしょうか」
「まあ一応は」
「名前だけは」
皆本当は知っているのだがこう答えるのだった。あえて。
「聞いたことはありますが」
「それが何か?」
「聖域に戻った時は取り寄せようと思っています」
そしてこんなことを言い出すのであった。
「少し。如何でしょうか」
「で、それは」
「誰が食べるので?」
皆怪訝というか死を前にしたような顔でアフロディーテに問うのであった。
「そのシュールストレミングを」
「誰が」
「黄金の仲間達です」
皆この言葉を聞いてまずは内心胸を撫で下ろした。
「そうですか。我々でないのですか」
「それは何よりです」
「何より?」
アフロディーテはその言葉にすぐに顔を向けてきた。
「何よりとは?」
「あっ、何でもないです」
「気にしないで下さい」
アフロディーテの今の言葉に咄嗟に表情を慌てたものにさせながらも打ち消すことに躍起になるのだった。それぞれの両手を出して必死に横に振りながら。
「別にまあ。そうした食べ物があ
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