第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
15話 柩の魔女
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せず、一緒に居る少女に歩幅を合わせるピニオラに追随して、転移門を潜った先の二十二層主街区の市場を抜けて、圏内の境界ギリギリまで進むとひっそりと佇む建物に通された。
姿を隠すような風貌や性質であったところから察するに、店の選択も陰に隠れた存在感のない立地を好むらしい。その点においては、俺も似通ったところがあるだろうが。
「此処ならゆっくりお話しできるでしょ〜? 周りに誰も居ないのだってご存知のようですしぃ、少し過激なお話だって大丈夫ですねぇ」
席についたピニオラの言うように、既に攻略が為されたエリアに攻略組は相応の用事が無い限りは出向かないし、二十二層は主街区に限らず片田舎という風情であり、観光目当てのプレイヤーは四層主街区や四十七層に群がるだろう。さしずめ、この層はプレイヤーの人口密度が限りなく低いエリアであるとも言えるだろう。人払いせずとも誰も寄り付かず、密会の席を設けるには誂え向きというわけだ。こんな場所を用意した彼女の思惑には疑念が尽きないところではあるが。
「ギルドのお仲間を傍に寄せ付けなかったのはどういう了見だ?」
「センパイ達は簡単には圏内に入れないですからねぇ。それにぃ、わたしはあの中でも嫌われ者ですし〜? 今さら、わたしのお手伝いをしてくれる方なんていないんですぅ」
ピニオラの発言には矛盾が無い。
攻略組が自分達の根城を探っていたという情報は、少なく見積もって《笑う棺桶》の内部で共有されている情報だろう。既に自分達の危急が知れ渡っているならば、俺をここまで誘き出したピニオラと連携を取って行動する者がいて然るべきだ。情報収集とするならば、こうしてギルドメンバーが攻略組と接触しているこの局面は相手にとっても千載一遇の好機となる。それをみすみす見過ごすというならば、これはピニオラが独断で行動したか、或いは孤立しているが故に単独で行動せざるを得なかったか。どのみち、《笑う棺桶》というギルドは一枚岩ではないということが窺える。
そして思案する間に、ピニオラは少女に食べたい料理を選ばせては手早くオーダーを店員NPCに伝えた。慣れているというか、そつがないというか、少女に対して負担を掛けないように対応しているようにも見えた。だが、あのタトゥーを見てしまった以上、認識と相容れない決定的な齟齬となる。
「その子は、どうした?」
「三日前くらいですかねぇ〜? はじまりの街で、軍のこわーいお兄さん達にいじめられていたので、ちょっとだけ懲らしめてお友達になっちゃいましたぁ。すっごい素直で可愛いんですよぉ」
視線を向けると、少女は怯えた様子でピニオラの背後にしがみつく。
端から見れば良く懐いているようで、睦まじい風情があるものの、しかして畢竟すれば相手が悪い。
俺の言えた道理では
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