第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
15話 柩の魔女
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ゃいますぅ?」
そういうと、突然ピニオラはタートルネックの襟を指先で引き下げて胸元を覗かせる。
ローブの下にあった時でさえ視認することのなかった箇所であったが、刻まれたタトゥーに思わず顔を顰める。
漆黒の棺桶、ずれた蓋から覗く両目と口、桶と蓋の隙間から伸ばされた白骨の両手。
それはまさしく、俺達が情報を追い求める最悪の殺人ギルド《笑う棺桶》の徽章に他ならない。
「ほら、ね? わたしだってリンさんを振り向かせられるでしょ〜?」
襟を正すなり、悪戯の一つでもしたような笑みを見せてくる。
俺としては、悪戯で済ませられるほど生易しいものではないように思えてしまうが、しかし、事態が核心に近づいたのもまた事実だ。
「………どうだろうな」
しかし、新たに疑念が生じたこともまた事実。
半ば諦念するように、現状の問題を精査しつつ呟く。
ピニオラ自身が構成員であれば仲介による情報遮断の懸念こそないが、彼女でどこまで情報を掴めるだろうか。いっそのこと彼女の身柄を確保してしまえば話は一挙に片が付くものの、男性である俺には、女性アバターであり、尚且つグリーンカーソルのピニオラに尋常な接触は叶わない。彼女が例え圏外にその身を置こうとも、俺には《ハラスメント警告》というディスアドバンテージが生じることとなる。
話を聞くにも、捕縛するにも、手段を整えて後手に回らざるを得ない俺にはあまりにも分の悪い状況だ。芳しくない状況であるというのに、ピニオラはその優位な立ち位置をまるで意識していないように振舞ってくる。
「そういうわけでぇ、込み入ったお話は別の場所でゆ〜っくりしましょう? 誰かに聞かれてもお互いつまらないですしぃ、ザワザワうるさいと聞き逃しちゃうかもですよ〜。みことさんも、お腹ペコペコですものねぇ?」
ピニオラの問いかけに、その背後に隠れて様子を窺うような視線を向けてきていた、ともすれば小学校低学年にも満たないような女の子は、頭を撫でられるとおずおずと頷いてみせた。
「わたしとしてはこれ以上、みことさんにお昼を我慢させるのは忍びないんですけどぉ、リンさんは如何ですかぁ?」
この場に於いて引き合いに出すには逸脱している気もするが、如何に詐略を本懐とする相手であっても虎穴に飛び込まねば得られないものもあるだろう。
「付いて行く。だが、圏内から出るつもりはない」
「くふふ、交渉成立。もとい、デート開始です〜…………あ、それと安心して下さいねぇ? わたしだってぇ、みことさんを連れて圏内から出ようなんて思わないですから〜」
言うなり、少女――――《みこと》と手を繋いでは黒鉄宮を後にするべく、ピニオラは歩を進める。
隠蔽スキルも使用
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