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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
番外編 鎮守府カレー祭り(後編)
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――その時、翔鶴――。
 瑞鶴、そんなに落ち込まないで。今回は私は充分100点だと思っているわ。もちろん、まだまだ課題と向上の余地は沢山あるけれど、今の私たちが精一杯やれたっていう意味での100点よ。それに、私たちが第一航空戦隊の先輩方に一つ優っていたことがあります。優っていたというか、今回だけなのかもしれないけれど、家族層の方からの得票率が一番だってことよ。
 ねぇ、瑞鶴。私ね、カレーをよそいながら一つ心に残っていることがあるの。ちょうどあなたが他のお客様のお相手をしていた時よ。6歳くらいの男の子がお父様とお母様に連れられてきたのだけれど、とても不機嫌だったわ。もう帰りたい帰りたいってずっと言っていたの。最初はなだめていたお父様お母様もいつの間にか不機嫌そうになって・・・私、その時にその子に、そしてお父様お母様に同じ甘口のカレーよそっちゃったの。うっかりだけれど。でもね、一口食べた男の子の顔がぱっと変わって、とてもおいしいって嬉しそうに言ってくれたの。それを聞いたお父様お母様も一口食べて、これ、うちのカレーと同じだっておっしゃるのよ。それからその子のおうちの話になって。人が変わったようにずうっと楽しそうに話してたわ、その子。お父様お母様も楽しそうだった。最後は3人で仲良く手をつないで帰っていたの。真ん中で男の子がとてもはしゃいでいたのが今でも目に残っているわ。
 それを見送りながら、私、とても嬉しくて嬉しくて、涙が出てくるくらい嬉しかったわ。おいしいって言われるよりも、家族の楽しさに貢献できたってことがとても嬉しかったの。
 瑞鶴、あなたの言う通り、私たちも赤城さん、加賀さんの姿勢を見習わなくてはならないけれど、でも、私たちの長所もずっと持ったまま成長できるといいわね。
 今日はお疲れ様、瑞鶴。あなたと一緒にカレーを作ることができて私はとても楽しかったわ。これからもよろしくね。
私もちょっとピアノを弾きたくなってきちゃった。かわってもらってもいい?


――同時刻、自室にて、紀伊のモノローグ――。
 今回は勉強することばかりだった。特に第一航空戦隊のお二人と第五航空戦隊のお二人のカレーは、対照的だったわ。第一航空戦隊のカレーは「味」を、第五航空戦隊のお二人のカレーは「楽しさ」を表現していたように思う。あの時どうして熊野さんが一瞬固まってしまったか、今思えばわかる気がする。あの時熊野さんも家族のことを思いだしていたんだと思う。楽しかった食卓での会話とか、ピクニックに行った時の事とか、かな。第五航空戦隊のお二人のカレーはなんだか魔法みたい。
 家族か・・・・。そういえば、私っていったい何者なんだろう。家族、いるのかな。姉妹艦、いるのかな・・・。一人ぼっちって本当に嫌だわ。
 ううん、落ち込んでばかりいられないわよね。私も来年は
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