番外編 鎮守府カレー祭り(前編)
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落としてしまい、それを拾おうとしてうっかり手を切ってしまったようです。
「大丈夫!?翔鶴姉大丈夫!?」
瑞鶴さんがおろおろと翔鶴さんに声をかけます。私は火をいったん止めて棚に向かい、ホウキと塵取り、それに救急箱をもって戻ってきました。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ごめんなさい。ご迷惑をおかけして。」
翔鶴さんは口から指を離しました。血はまだ出ていますが、それでも深くはないようです。指をまず綺麗に冷水で洗い、次に綺麗な柔らかいタオルで止血するように包んで、心臓の高さより上にあげるようにお願いしました。こうすればたいていの傷の出血は止まります。瑞鶴さんも途中から手伝いに加わって、お二人はその間にも何度も私にお礼を言いました。
「情けない。」
後ろで吐息交じりの声がしました。振り向くと、加賀さんが瑞鶴さんを見つめています。
「たかが包丁で指を切ったくらいで、動揺して手当てもできないのですか?」
「そ、そんなことないわよ。」
顔を赤くする瑞鶴さん。
「ちょっと、突然の事だったから動揺しただけよ!」
「加賀さん。」
赤城さんがそっと加賀さんの袖口を引っ張りますが、加賀さんはなおも言葉をつづけます。
「翔鶴姉翔鶴姉翔鶴姉・・・・あなたもいい加減お姉さんから自立したほうがいいと思います。人前にもかかわらずべったりとする姿はとても清々しいものだとは言えません。」
「ぐっ!!」
瑞鶴さんの拳がぎゅっと握られましたが、何も言いませんでした。たぶんですけれど、加賀さんのおっしゃることはあながち間違っていなかったわけで、当の瑞鶴さんもそれを自覚しているところはあったのかもしれません。加賀さんはそんな瑞鶴さんに対して、それ以上何も言わず、自分の調理場に戻っていきました。
「瑞鶴さん・・・・。」
私がそっと声をかけようとしたその時です。また、パリン!という音が調理場に響き渡りました。私たちが一斉に振り向くと、立ち尽くす赤城さんの指に吸い付いている加賀さんの姿がはっきりと目に飛び込んできました。足元には散らばった陶器のかけら。どうやら盛り付けに使う皿を誤って落とし、それを拾おうとしてうっかり手を切ってしまったようです・・・・って、あれ?これ、って――。
私たちとばったり目があった加賀さんの顔がみるみる赤くなり、不意にくわえていた指を離しました。出血は続いていますが、それほど深くはないようです。私は急いで今度は赤城さんのもとに駆け寄って、冷水で指を洗い、柔らかいタオルに包んで、心臓より高く上げるようにお願いしました。これじゃ私はなんだか看護師さんみたいですね。赤城さんは何度も私にお礼を言いました。
と、その時後ろでわざとらしい咳払いが聞こえました。
「へぇ〜〜・・・・。」
瑞鶴さんがにやりと口の端をゆがめてこっちを見ています。
「なるほどね
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