番外編 鎮守府カレー祭り(前編)
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
器をつかんでいます。
「気やすく触らないでいただけますか?ここに置いてある食材や調味料は皆共同の物です。」
「それはそうだけれど、これは私がとってきたものよ!欲しかったら自分が取りに行けばいいじゃない。」
「何をおっしゃっているのですか?ここに『共用』と書いてあるのが見えませんか?先ほど私が戸棚を調べに行ったら在庫がありませんでした。」
「あったわよ!」
「いいえ、ありませんでした。あなたの注意力不足です。」
「あなたこそ、どこに目ん玉つけてるの?私が見た時は少なくとも4つあったわよ。あきれたわね、第一航空戦隊の双璧と言われたその一人は、実は視力に難点があったとか?」
榛名の空耳でしょうか。一瞬加賀さんのこめかみが盛り上がり、ピキッという嫌な音が立ったような気がしました。急に寒くなってきました。空気が一気に凍りついたのがわかります。
「二人ともごめん!」
と、そこに足柄さんが割って入るようにして、
「これ、私が持っていたの。4つのうち2つが空で、3つまとめて自分のところに持ってきたのだけれど、ついついそれを自分のところに置きっぱなしにしていたの。」
それを聞いた瑞鶴さんは仏頂面のまま手を離しましたが、一言も謝りませんでした。やっと翔鶴さんにせっつかれて渋々といった体で謝ります。
「本当に申し訳ありませんでした。」
翔鶴さんが、深々と頭を下げますが、加賀さんは脇を向いたまま、
「別に。五航戦の子が突っかかってきたからと言って、自分の非違を他人に擦り付けたからと言って、いちいち気にしていたらきりがありませんから。」
瑞鶴さんがぎりっと歯を食いしばったのが聞こえました。
「どうせウスターソースなんか持っていったって、満足に使いこなせないくせに。」
小声で吐き捨てるようにして調理場に戻る瑞鶴さん。それを見ていた私は悲しくなりました。普段はとてもいい方なのに、第一航空戦隊のお二人のこととなると、過剰に反応してしまうようです。加賀さんは眉を跳ね上げましたが、それでも何も言わず、黙々と自分の作業に戻っていきました。
それからしばらくは誰もが無言でそれぞれのレシピをもとに作っていきます。私も具材をこまかく切り、フライパンで炒め、そこに前日アレンジしたカレーのルーとスープストックを加え、さらに炒めます。今回は水を使わないドライカレー風にする予定です。大きめのナスとピーマン、そしてパプリカを半分にカットしたものをご飯に添えて、そこに細かく切った具材をひき肉と合わせた少し辛めのソースをかけるんです。ピリッとした辛さがこれからの夏の季節にぴったりかなぁって。うまくいくといいのですけれど。
突然パリンという音が響きました。顔を上げると、翔鶴さんが指を口にくわえています。足元には散らばった陶器のかけら。どうやら盛り付けに使用するお皿を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ