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STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「前編」
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心出来る解答の一切を謝絶した。
 何より、恐怖に震えるこの状態で否定も肯定もなかった。
 その形の良い指先まで震わせ怯える少女を
男はどこか懐かしむようにしばらくみつめていたが、やがておもむろに口を開く。
 そして、何の偽りも誤魔化しもない、『真実』 のみを彼女に語った。
「“幽霊” という概念が、一番理解し易いと想う。
私という人間の 「肉体」 はとうの昔に跡形もなく朽ち果て、
今は “魂だけ” の存在だ。
此処は 「この世」 と、在ればの話だが 「あの世」 の 『境界線』
屋敷幽霊(やしきゆうれい)】 なのさ」
「ゆ……ゆ……幽霊……屋敷……!?」
 混濁する意識の中、少女は必死に男の言葉を飲み下した。
 それ以外に、恐怖から逃れる術が想いつかなかった。
「違う違う、ソレは、幽霊の()んでいる(やかた)のコトだろう?
私が言っているのはその 『逆』 “屋敷(やしき)幽霊(ゆうれい)なんだ” 」
 ようやく漏れた少女の言葉を、男は澄ました表情で否定する。
 最も、今のこの状態の彼女に何を言っても
怯え以外の応えは返ってこないだろうが、男は構わず続けた。
 自分の言った事を最終的にどう判断するかは、
あくまで少女自身の問題だからだ。
「“物の幽霊” と言えば、少し解るかな?
ある建物が火事や戦争で跡形もなくなったのにも関わらず、
“その場所は形容(カタチ)を変えて存在するコトがある”
人の強い想いや永い年月を経過した建造物は “そうなる” 場合が多いという。 
そして魂は時間や空間に縛られるコトはないから、
ずっと同じ場所に留まり続けるモノもあれば、
あらゆる時空を “漂流(ひょうりゅう)” するモノだってある。
ソコにどんな 『宇宙の法則』 が在るのかまでは解らないがね」
 哲学者のような口調で男はそう締め括り、生気を映さない瞳で少女を見た。
 その視線に威圧や恫喝の気配はなく、微かな憐憫の色があった。
「あ……あぁ……ああああああぁぁぁ……」
 意味不明の言葉の羅列に、遂に涙腺が決壊し透明な雫が少女の頬を伝い
制服の胸元に染み込んだ。
 その心中は、尽きることのない悔恨と悲痛な傷心だけが充たしていた。
(なんで……なんで……こんなコトになるの……?
なんで……私……こんな所にいるの……?
知らない 『道』 なんて、放っておけばよかった……
いつもみたいに……そのまま帰ればよかった……)
 そうとは知らず、怖い事だなんて解らず、
取ってしまった取り返しのつかない選択。
 ほんの些細なキッカケで、少し行動を違えただけで、
昨日までの平穏な日常は跡形もなく消し飛んでしまう。
 そのコトを少女はこの状況に陥って初めて、文字通り嫌というほどに認識した。
 
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