STARDUST唐eLAMEHAZE/外伝
吉田 一美の奇妙な冒険 「前編」
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には帰って来ないのではないかと、
根拠はないが奇妙な実感と共にそう想える。
アノ時。
花びらの舞い散る通学路で、彼が自分に背を向けて行ってしまった時から。
所詮は住む世界の違う者同士、進む 『道』 が交わる事は決してないのだ。
「ふぅ……」
交差点の信号で立ち止まり溜息をついた少女は、そこで項垂れていた顔を上げた。
視界に入る、見慣れた街の風景。
(コンビニでも、寄って行こうかな?)
道路を隔てた左斜めの位置には、青い牛乳瓶のマークで有名な
大手のコンビニエンスストアがある。
駐輪場沿いのガラス越しに、立ち読みをしている学校帰りの生徒が
大勢たむろしているが見知った顔もないので大丈夫だろう。
新作のスイーツでも幾つか買って、久しぶりにお母さんとゆっくりお茶を
飲むのも悪くないかもしれない。
そうすれば、今の鬱屈した気分も、少しは……
想った矢先、少女の視線はある一点で静止した。
(ア……レ……?)
最初は、ほんの僅かな違和感。
しかしそれは見慣れた周囲の風景を改めて見回す事によって、徐々に膨らんでいく。
(あんな所に 『道』 在ったっけ?)
子供の頃から数え切れないほど通った街路。
母の手に引かれ、弟の手を引き、一人で、友人達と一緒に、
自分の成長と共に色彩を変えていったアスファルト。
路面の罅や歪みの形まで判別出来る位、少女の記憶に染み込んだ故郷の街並み。
故にその感覚が、通常なら見落としてしまう些細な違いを明確に認識した。
(まずあそこが、お蕎麦屋さん)
解りきった九九を用心深く復唱するように、少女は視線を送る。
(次に、薬屋さん)
自分もよくお世話になるので間違いようがない、店の人とも顔馴染みだ。
(そして “次” がコンビ……)
だが彼女の視線は再びソコで止まる。
本来、薬屋の 『すぐ隣にある筈の』 コンビニとの間に
明らかに見慣れない空間がぽっかりと開き、
そこに 『道』 が当然のように存在していた。
(……え? え? えぇ〜!?)
想わず声をあげそうになるのを、少女はなんとか押し止めた。
自分の記憶に、間違いがある筈がない。
昨日までは 『絶対に無かった』 筈だ。
市がこの近辺で工事をするという話は聞いた事がないし、
第一たったの一日で店舗と店舗の間を通すような複雑な事業が終わるわけがない。
もしかして自分が何かとんでもない思い違いをしているのではないかと
内心焦ったが、それは杞憂に終わった。
傍に立てられた真新しい街路図を何度も確かめたが、
薬屋とコンビニの間に 『道はない』
(一体、どういうコト?)
信号が青になっているのも関わらず
点字ブロックの上に佇む少女の髪と制服の裾を、
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