暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
Where there’s smoke, there’s fire.
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「ありえへんッ!!」
猫妖精
(
ケットシー
)
領首都、フリーリア。
トンガリ屋根が連なるその中でもひときわ高い尖塔があった。
領主館。
街の執政の中心。主に一般プレイヤー達から徴収した税の使い道を決定し、領主の名のもとに様々な行事を執り行う。そのための意思決定や会議やらを執り行う施設だ。
その五階、大会議室。最上級の職人プレイヤーが手掛けた調度品である円卓の天板が割れんばかりに叩きながら、ヒスイは叫んだ。
対するは執政部に背後に置いたアリシャだ。とうもろこし色のウェーブヘアから突き出す三角形の耳をぺたんと寝かせながら、怒鳴り声に臀部から伸びる縞模様の長い尻尾をくねらせている。
「わ、わかってるヨ〜、ヒスイちゃん。でも、こうでもしないと皆が納得しないんだヨ」
「ッッ!!」
キッ、とヒスイはアリシャの辺りを囲う執政部の面々を睨む。
だが彼らの視線は一様に冷たい。
歯を食いしばりながら視線をアリシャに戻す。よほどキツい目でもしていたのか、華奢な肩が跳ねた。
「だからって、フェンリル達を押さえるなんて……越権行為やないか?」
怨嗟の声のようなドスのきいたヒスイの声に、執政部のプレイヤー達がにわかに眦を鋭くし、怒りをあらわにする。
彼らの怒りはもっともだ。逆の立場ならヒスイだとて似たような提案が頭を掠めるかもしれない。
実際、今回の事件が
火妖精
(
サラマンダー
)
の陰謀――――というか難癖ではなかった場合、事の運び具合によってはかなりマズい事態になりかねない。
旧運営体時代とは違い、翅の連続使用時間が廃止された今、昔ほど首都間、または中央との距離はかなり短くなったと言っていい。実際、飛行速度に長けた
風妖精
(
シルフ
)
が自領からアルンを目指したとして、昔で丸一日、今では四、五時間というところだろうか。
だが、逆に言えばまだそれだけかかるのだ。央都とを結ぶキャラバン――――おそらく諸物資などを山ほど積んだ荷馬車だ。月に数度というその重要な交易ラインがケットシーの象徴とも言えるフェンリル・ラウンダーに襲撃されたと言われれば、そりゃ誰だって怒りの矛先をケットシーに向けるだろう。
しかしそれでも、それはそれ、これはこれだ。
打てる手としては悪手も甚だしい彼女らの決定にヒスイは顔を歪ませた。
「あてら押さえるっちゅーこと、どういうことか分かってないワケあらへんやろ?」
竜騎士
(
ドラグーン
)
隊は機密条例で、よほどの事態がないとおおっぴらに動かせない。その状況下で、即座に動かせる即戦力として
狼騎士
(
フェンリル
)
隊は生まれたのだ。ただでさえ動かせる唯一の手駒であるべきフェンリルを封じればどうなるか、この領主が考え至っていない訳がない。
だからこそ、ヒスイは言った。
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