第二十四話 嵐の到来
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くちゃならないんですか!?」
「なっ!?」
「同じことを言いますけれど、麻耶先輩は私の旗艦じゃないですもの。」
「だって、お前軽巡で――。」
「軽巡だからってだけで私に命令できるんですか?ひどい!!」
「それは・・・・。」
麻耶は言葉に窮した。自分が先ほど放った矢が巡り巡って自分の後ろから突き立ったような感触を覚えていた。そのことがとても腹立たしく、頭に血が上りそうだった。
だが――。心のどこかでは自分もまた艦種艦種という言葉にとらわれていたのだという声が響いていた。人にされて嫌なことを、人に強制できるのか。答えは当然否だった。
「わかった・・・・。指示には従う。けど、これは成り行きだからだ。あたしはまだあんたたちを信じたわけじゃないからな。」
今はそれで十分です、と扶桑はうなずいて見せた。
艦載機を発艦し終わった二人は転進をやめ、敵艦隊に向かって全速で進んだ。先頭の深海棲艦(おそらく重巡リ級)が砲を続けざまに発射するのが見えた。数秒ののち、二人の左に音を立てて砲弾が飛翔し、水柱が立ち上がった。既に右方向から古鷹たちが猛進して砲撃を浴びせかけているが、敵もまた次々と新手を繰り出してくる。
「最初から狭差!?」
「大丈夫!まだ距離はあるわ。」
紀伊は妹を励ました。新型空母戦艦とはいえ、狭い湾内では存分に動くことはできない。かといって湾の入り口を敵に封鎖されている今、外洋には出られない。ここは思い切った戦い方が必要だと紀伊は思った。戦艦として備えている主砲を最大限効果的に活かす戦術は何か――。
「讃岐、転進、右90度。」
「えっ!?敵前回頭ですか?!」
敵の目の前で回頭することはその行足も速度も瞬時に計算されてしまい、砲撃の的になりやすく危険だった。
「そう。敵艦隊の先頭を横切るようにして左舷砲戦、先制砲撃よ!!」
「でも、それじゃ――。」
「この煙と炎だもの。私たちはそれを背にしている。敵にとっては私たちはシルエットになるわ。狙いが付けにくいはず。そこを狙うの。大丈夫。きっと大丈夫!」
讃岐は白い歯をみせてうなずいた。
「姉様、信じてます!」
「行くわよ!」
「はい!」
二人は急速に反転した。たちまち白い波しぶきが砲に、艤装に、そして体に降りかかる。強風が吹きすさび、波しぶきの飛沫のが飛び交う中左舷砲塔が旋回して狙いを付けた。
「主砲!!砲撃用意!」
「砲弾装填、零式弾!!」
「諸元入力よし。」
空を引き裂くような何とも言えない音とともにものすごい高さの水柱がすぐ目の前で噴き上がった。
「仰角修正マイナス0,2度、距離18,000、完全に有効射程距離です!姉様!」
降り散る水しぶきの中、紀伊の左手が後ろに向けられ、前に振りぬかれた。
「テ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
41セ
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