第二十四話 嵐の到来
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ね。」
陸奥が微笑んで見せた。
「でも、それにしても・・・・・。」
陸奥は顔色を一変させた。苦悩の表情が現われていた。
「これで私たちは苦境に立たされるわ。太平洋横断作戦に備えて備蓄していた燃料、弾薬、高速修復剤などが焼失してしまった。」
はっと長門は港湾を振り返った。まだ紅蓮の大火炎は立ち上り、消えることを知らないかのような勢いだった。かなり離れているのにその熱風の熱さははっきりと感じ取れる。
大音響と共に炎が天高く立ち上った。燃料タンクに引火したのだ。
「敵の狙いは・・・これだったのか。くそ!!!」
パァン!!と長門の打ち付けた両拳の音が空しく海上に響き渡った。
湾内にあって、敵艦隊の掃討に従事していた紀伊は、勢いの衰えつつある敵の排除を矢矧たち新手に任せ、後ろを向いた。
濛々たる黒煙が鎮守府を覆い包んでいる。時折炎の中から腹に響く重い爆発音がとどろき、爆炎が立ち上るのは、また燃料タンクに引火したからなのだろう。それとも弾薬庫だろうか。火の勢いはまだ収まらない。
チラチラと舞う火の粉と熱風が吹き付けてくる。それを腕でかばいながら、紀伊は今頃になって戦慄を禁じ得なかった。
沖ノ島侵攻作戦で激戦の末、同島攻略をなしたことに皆が高揚していた。各艦娘の対立がここ最近頻発していても、その高揚感自体はまだ持続していた。これで絶対安全圏が確立され、もう深海棲艦の侵攻に怯える必要はない。少なくとも当面は。皆がそう思っていたし、そう信じていた。
それが今回の急襲であっけなく崩れた。根拠地を失っても、あれだけの大艦隊が攻め寄せてくるほど深海棲艦はまだまだ余力を残している。自分たちが得た勝利とはなんともろかったのだろう。紀伊は自分の足元が崩れ落ちていくような感覚にとらわれていた。
「姉様・・・。」
讃岐がそっとよってきて後ろから紀伊の右手を握った。
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