二十話:食べログ
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闘争心に火をつける。
蓮華を引っ掴み勢いよく麻婆豆腐を口一杯に頬張り―――机に突っ伏す。
「父さん…姉さん……意地張ってごめんなさい」
『ジャンヌ・オルタがあまりの辛さに懺悔を始めた…!?』
意識が吹き飛び、普段の彼女では考えられない素直な言葉が零れ出てくる。
人間死ぬ前になると色々と後悔するのだ。
一方のブリュンヒルデは何事もないように座り続けている。
だが、それは所詮見た目だけだ。
「…………」
『座ったまま尚、君臨するのか……ブリュンヒルデ』
蓮華を咥えたまま意識を失いながらも座り続ける戦乙女の姿にぐだ男は涙を流す。
ただの一口でこれである。完食すればどうなるのか。
三人がそこまで考えたところで店主の悪魔の声が降ってくる。
【お残しは許さないアルよ】
恐怖には鮮度というものがある。
残された希望がもぎ取られた時、人間はこの世で最も恐ろしい感情を抱くのだ。
しかし、恐怖に打ち勝つのもまた人間に許された選択である。
「や、やってやろうじゃないのよ……後でボロ糞に書いてやるんだから…!」
「原初のルーンで味覚を変化させればこの程度…!」
『目の前の麻婆も間食できずに人理救済なんてできるかよ…!』
三人はそれぞれの確固たる意志をその手に持つ蓮華に乗せる。
そして、戦友と一度視線を合わせ最後に小さく頷き合う。
『生きてまた会おう』
「ふん、せいぜい死ぬんじゃないわよ」
「お二人ともご無事で」
今生の別れを済ませ“この世すべての辛味”に勇者達は無謀にも立ち向かっていくのだった。
「………あの子達は何をやっているんだ? いや、僕みたいな年寄りには若者は理解できないか」
【はい、衛宮さん、お代わりあるよー】
「ああ、ありがとう。しかし、ここの麻婆豆腐は上手いな。アイリの手料理は愛は詰まっているんだが劣化ウラン染みているからなぁ……まあ、残したことはないんだが」
三人の若者達が死地に赴く中、擦り切れた元正義の味方は一人ぼやくように惚気ながら激辛麻婆に舌鼓を打っていたのだった。
『お腹がずんがずんがするです……』
「これでも食べて傷ついたお腹を癒しましょう」
お腹を押さえて麻婆の後遺症に苦しむぐだ男。
そんな彼にコンビニで買ったチョコアイスをそっと差し出すブリュンヒルデ。
因みにメガネの形はしていない。
「ちょっと、私の分はないのかしら?」
「お姉様は私と一本のアイスを溶かしあってそのまま口移しを」
「やるわけないでしょ!」
「冗談です。はい、お姉様にはこれを」
クスクスと笑いながらアイスを二つ差し出す。
ジャンヌ・オルタはジト目で睨みながらもその
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