アインクラッド編
11.ギルドリーダーの我が儘に
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のも、シルストが少々厳しい突っ込みをするのも、それを聞いたタクミがシルストを叱るのもいつもの風景になっていた。
「泳ぎたい、だと?」
「そりゃあまた、突拍子もないこと言うねぇリーダー。ハワイでバカンスってか?出来たら面白そうだけど、まぁ無理だろ」
「そうねぇ、無理じゃない?」
ウインドゥを広げてアイテムを整理していたアルトが不審そうな声をあげた。男子勢に数分遅れて帰ってきたリヒティとクリスティナも頭を振る。
「ええ〜何で皆乗り気じゃないの!?楽しそうじゃない!」
「あのねぇミーシャ。いくらこのギルドの方針がアインクラッドを楽しむことでもね、限度ってもんがあるん。分かるじゃろ?」
「分かる・・・分かるけどぉ」
「4層の水路で泳ぐ?」
「それは嫌」
「なら諦めな」
ミーシャは拗ねて頬を膨らませた。こういう時の彼女はとても我が儘だ。なおも泳ぎたい泳ぎたいと文句を言うミーシャを宥めるべくアンが口を開く、その寸前に。
意外な人物―――ある意味では最も予想していた人物―――が口を開いた。
「あるらしい」
「・・・何が?」
皆の気持ちを代弁してタクミが尋ねると、アルトはウインドゥを可視化してメンバーが見えるように動かした。表示してあるのは第27層、最前線より6つ下の層だった。
「今≪鼠≫に聞いた。彼女自身が行ったことはないらしいが、クエストをクリアしたときに泳げそうな場所があるという話をNPCがしてくれたそうだ。ただ、ポップするモンスターが難敵で諦めたと言っている。どうす」
「行こう!」
アルトの話を途中で遮って、ミーシャが叫んだ。何と言うか、もう予想通りだ。アルトもやっぱりな、と言いたげな表情をしている。極端に表情を変えないアルトをここまで反応させるのだ。ミーシャは何かしら才能を持っているに違いない。
「あんたいい加減にしねミーシャ。アルトの言っとること聞こえんかったんか?」
「そうよミーシャ。せめてもうちょっとレベルを上げてからじゃないと」
「アルゴが難敵って言ったってことは相当難敵」
シルスト、クリス、タクミに口々に攻められて、ミーシャはムッとした表情になった。暫くじっと考え込んでいたが、やがてニヤッと笑った。
「アルト、その難敵ってどれくらい?」
「この前戦った26層のネームドモンスターをもう少し強くしたくらいだと考えれば良い」
「アン、今レベルいくつ?」
「え、えっと37・・・」
「よし、じゃあ今日が水曜日だから、土曜日までに皆3つずつレベルを上げよう。んで日曜日に泳ぎに行こう!」
「ええぇぇぇぇぇ!!」
「まぁまぁ、皆ギルドリーダーの我が儘に付き合ってよ!頑張ろう!」
ミーシャの決定に声も出せなくなったシルストやタクミの代わりに、アルトが低く呟いた。
「我が儘は自覚があるんだな」
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