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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第二十三話 和解に向けて
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「そこで見ていればいいわ。もっとも近接戦闘に向いていない戦艦と空母に対して空母戦艦の性能がどう違うかを。そこで黙ってみていなさい。」
「あっ!!ちょっと待っ――」
紀伊の言葉は空を切った。尾張はいち早く速力を上げると艦列から離脱していった。
「紀伊さん!」
紀伊の周りに阿賀野、酒匂、吹雪、清霜が集まってきていた。
「ど、どうするんですか?尾張さん、艦列離れちゃいましたけれど。」
と、阿賀野。
「これ、下手をしたら軍法会議ものだよね。」
清霜が吹雪を見た。
「いいえ、今回は尾張に作戦運用を任せたから、彼女の思う通りにしても問題ないわけで・・・・・。」
紀伊のため息交じりの返答を聞いた4人は色めきだった。
「でも――!」
「そんなこと――!」
「旗艦の命令もなしに勝手に離れるなんて――!」
「駄目な感じだと思いますけど・・・・。」
最後に阿賀野が締めくくった。
「でも・・・・・。」
「紀伊さん!」
吹雪が叫んだ。
「紀伊さん、尾張さんに何か後ろめたいことでもあるんですか?!」
「えっ!?」
「どうして尾張さんに遠慮するんですか?お姉さんならお姉さんらしくするべきです!!」
紀伊は目を見張り、愕然となった。そういえば、今ここにいる吹雪は特型駆逐艦として世界の駆逐艦常識を超えた艦隊駆逐艦の祖となった艦娘だった。つまり、すべての駆逐艦の姉というべき存在になる。まっすぐな彼女からそういわれると、紀伊は頬が赤くなってくるのをこらえられなかった。
「そっか・・・・私は何を遠慮していたのだろう・・・・・。」
紀伊はここ数日のモヤモヤしたものの正体を思い知った。尾張に対して何も言えなかったことや委縮していた事、それを煎じ詰めれば、姉らしく振る舞えなかったことだったのだ。
「わかりました。今からでも遅くはないです。申し訳ないですが、尾張を・・・・妹を止めに行きます。手伝っていただけますか?」
4人は一斉にうなずいた。


尾張は全速力で大海原を走り抜けながら、艦載機を次々と発艦させていた。前方距離2万足らずのところに敵艦隊が単縦陣形を組んでいる。敵がこちらに気が付いたとき、尾張は既に攻撃態勢を整えていた。
「まずは一撃で、敵の旗艦を轟沈させてあげるわ。」
不敵な冷笑を浮かべた尾張は次の瞬間顔を引き締めて指令した。
「艦載機、第一小隊は前方の敵第一の艦を攻撃!!第二小隊は後方の艦をかく乱、陣形を乱しなさい!!」
向かった艦載機は次々と低空で海面を飛行、あるいは急降下を開始し、一気に先頭艦に集中攻撃を浴びせた。轟音と共に先頭艦が爆発、四散し、敵は動揺の色を見せて色めきだった。すかさずそこに艦載機たちが突撃し、爆雷撃を敢行する。これに耐えられず数隻の駆逐艦が撃沈された。
「よし、全機退避!!あとは私が!!」
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