第二十三話 和解に向けて
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何故なら紀伊には阿賀野、酒匂、吹雪、清霜たちがいる。戦歴は彼女たちの方がはるかに上だが、そのような先輩風は吹かず、紀伊と一緒に頑張ろうという空気を出してくれている。対するに高雄の下にいるのは戦艦・空母ばかりだった。しかも金剛型の大先輩二人が付いている。金剛たちはとてもいい艦娘なのだが、重巡は高雄一人だけだった。紀伊自身は艦種のことを気にしないのだが、客観的に見て重巡と空母戦艦は立ち位置が違う。空母戦艦は艦隊の中核攻撃力を担う存在だが、重巡は火力では戦艦に劣るし、航空戦にも加わることはできない。
そのような立場に立った高雄は紀伊以上に旗艦としての責務を重苦しく受け止めているはずだった。あの表情の硬さがそれを物語っている――。
「何をしているの!?さっさと行くわよ、私たちも!」
尾張が紀伊をにらんでいた。いつの間にか各艦娘たちは発着台にたって準備している。紀伊は慌てて自分も発着台に乗った。
人のことを気にしている場合ではない。まずは目前の作戦を成功させ、なんとか尾張と和解したい。紀伊はそれのみに集中しようと気を張り詰めはじめた。
足元の発着台が下がり、足元を波が浸し始めた。この感覚はもう何回も慣れているのに、ふと紀伊は不安感を覚えた。今日の出撃は無事に戻れるだろうか。ここ数日そんなことを考えもしなかったのに、ふと胸騒ぎを覚えたのだ。紀伊は胸元に手をやった。これを感じる時は悉く何かが今まで起こってきている。
(今回はそうならないように願いたいわ。ただでさえ尾張やみんなに気を遣わなくてはならないのに・・・・お願い!!)
紀伊は一瞬祈るようにぎゅっと服をつかむと、手を離し、姿勢を伸ばした。
「紀伊型空母戦艦一番艦紀伊、出撃します!!」
その言葉と共に紀伊は陽光きらめく大海原に走り出ていった。他の艦娘たちも後をおう。その姿はきらめく初夏の陽光の中に解けるように消えていった。
30分後――。
夏の熱気と湿気を含んだ風も大海原に出ればいくらか涼しさすら感じる程度になる。その中を紀伊たちは快調に、だが慎重に偵察海域を進んでいた。
「尾張。」
紀伊は妹に声をかけた。尾張は紀伊のやや左斜め後ろにいて腕を組んだまま前方をにらんでいる。とはいえ方位警戒は怠っておらず、時折あたりを見まわしているのはさすがと言えた。
「なに?」
「そろそろ哨戒海域最深部よ。偵察機を発艦させて、周辺警戒に当たらせる?あなたのプランではそうなっていたわよ。」
「私の指揮権に勝手に口出ししないで!!ったく!!」
紀伊はむっとしたが、ここは我慢することにした。
「もちろん偵察機を出すわ。あなたは12時から6時方向に飛ばして。私は6時方向から12時方向を担当するわ。」
「わかった。」
二人は飛行甲板を構えると、偵察機を次々と放った。尾張の放つ偵察機をみ
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