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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第二十三話 和解に向けて
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えてきた。榛名は窓から少し身を乗り出して青空を見あげた。
「その本が何だったのか、もう思い出すことはできないのですが、その言葉だけは頭の中に残っています。『神様は乗り越えられない試練はお与えにならない。』って。」
そういう榛名の顔はとても澄み切って見えた。
「もちろん。」
榛名は紀伊を振り返って言葉をつづけた。
「100%そんなことはありません。そうであれば、戦争で人は死にません。病気で人は死にませんし、自殺する人もでません。その言葉が絶対じゃないっていうことは私にもわかっています。でも・・・・。」
榛名は紀伊を正面から見た。
「試練全部が乗り越えられない。そういうことでは決してないともいえると思います。私、紀伊さんを見ていて思いました。あきらめたらそこで終わりだって。あと少しで壁を乗り越せるところまで来ているかもしれないのに、あきらめたらそこで終わりだって。」
「榛名さん・・・・。」
榛名は人を和ませるあの微笑を顔に浮かべた。
「紀伊さんならきっと大丈夫です。私、そう信じていますから。もし旗艦のお仕事でわからないことがあったら遠慮なく言ってください。妹さんのことも相談してくださいね。」
眩しい榛名の言葉に紀伊は口ごもりながら礼を言った。榛名はうなずき返したが、ふと気が付いた顔になって言葉をつぎ足した。
「でも紀伊さんはもう一人じゃありませんから。」
えっ、と紀伊は榛名を見た。
「紀伊さんは一人じゃありません。だって紀伊さんの周りには・・・・。」
榛名は紀伊の後ろに視線を移した。思わず振り向いた紀伊の後ろに二人の艦娘が立っていた。この間までその存在すら知らず、そして今かけがえのない存在になりつつある二人――近江と讃岐。

 紀伊と視線が合うと、二人はそろってにっこりとうなずいてみせた。それを眺めながら紀伊は誓っていた。今はここに3人しかいない。だが、必ず尾張を入れて4姉妹として頑張っていくのだと。



「どうしてそんな航路をとるわけ!?」
第五艦隊会議室で尾張の声が上がった。あれから何日もたっていたが状況は一向に良くならない。尾張はことあるごとに作戦に口出ししていた。作戦最中も、作戦後も。紀伊はいちいち相手になっていたが、あまりにも強引だと感じた場合には黙って聞き流すだけにしておいた。だが、それももう限界に近づいていた。
「どうしてって・・・ここが今まで敵と最も多く会敵しているから――。」
「それは今までの話でしょう!?航空隊の報告だと、近頃はそこから西、この地点で敵艦隊の跳梁が報告されているわ。ならそこを重点的に捜索すべきでしょう!」
阿賀野たちは二人のやり取りを居心地悪そうに聞いている。
「どうしてあなたみたいなのが艦隊旗艦になったのか、ものすごく不思議だわ。最悪よね。航路設定もまともにできない旗艦な
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