第二十三話 和解に向けて
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「危ない!!」
誰かが叫んだ。吹雪か、阿賀野か、誰かもわからなかったが、その直後紀伊は強烈な衝撃を受けていた。
「・・・・・・!!」
幸い体には命中しなかったが、41センチ3連装砲第二砲塔の砲身が2本、根元からねじまがっている。
「しまった!!」
砲撃を敢行したのは、右翼にいた敵の残存艦だった。軽巡と重巡一隻ずつ。普段ならば苦戦もしない相手だったが、この時の紀伊は連戦で疲労しきっていた。おまけに主砲6門のうち、4門は攻撃を受けて機能しない。しかも艦載機隊も雷爆撃を敢行した後で、攻撃能力を失っている。紀伊の顔から血の気が引いた。
「もう、駄目・・・・!!」
そう思った直後、不意に横合いから突き飛ばされた。よろめいた紀伊の視界の隅に銀髪とそれに隠れる様な青い髪が靡いた。
「主砲、テェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
尾張が叫んでいた。彼女もまた主砲を折られながらも、なお残った主砲で敵艦隊を砲撃していたのだ。同時に潜水艦隊を掃討した阿賀野たちが紀伊たちを庇うように前面に突出して、雷撃を敵艦隊に浴びせた。
轟然と軽巡、そして重巡が爆発し、海上を一瞬炎で染めた。
ハァ・・・ハァ・・・・ハァ・・・・・という息遣いが聞こえる。
それが自分とそして尾張のだと、しかも疲労だけではなく恐怖からだということに気が付くまで時間がかかった。
「・・・・・・・・。」
紀伊は尾張の後姿を見た。主砲は折れ曲がり、飛行甲板は損傷大破。さらに推進装置も破損していた。尾張がこちらを見た。制服もボロボロで左腕を抑えていた。
「こんな・・・こと・・・・。」
尾張は唇をかみしめ、頬が汚れていた。艦隊との砲撃戦闘の火薬煙だけではなさそうだった。
「こんなこと・・・こんなことって・・・・・うっ!!!」
平手打ちの音が響き、尾張が頬を抑えていた。
「バカ!!!」
紀伊が返す右手で尾張の頬をもう一度叩いた。
「いった・・・・!!!な、何を――!!」
「バカ!!!バカ!!!バカ!!!!!」
紀伊が叫び続けていた。悔しかった。もどかしかった。そして、とても頭に来ていた。そのいっしょくたの感情を全部まとめて尾張に叩き付けていた。
「何が新鋭艦よ・・・・何が無敵よ・・・・!!!そんな虚飾に踊らされて、あなたは自分の命さえも失うところだったのよ!!!バカ艦娘!!!!」
「―――!」
最も軽蔑する相手から、ものすごい罵倒を浴びせられた尾張は声も出ず立ち尽くしていた。
「今の自分の姿を鏡で見なさい・・・・・。そうすれば嫌でも自分は万能ではないと知るわ。」
「・・・・・・・。」
「どうしようもなくあなたは・・・・。」
紀伊は不意に激しく首を振ると、尾張を抱いた。
「でも・・・良かった・・・・良かった・・・・良かった・・・・!!無事で、生きていて・
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