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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
裏切り
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よって半自動操縦されるアバターは猛然と地面を蹴り、発光する刃をネペントの補食器の上で揺れる丸い《実》へと叩き付けた。

パアァァン!!

と、凄まじい音の破裂音が森を揺らした。

実を粉砕したコペルの《バーチカル》は、そのままネペントの補食器をも断ち割り、HPゲージを削り切った。モンスターは呆気なく爆砕したが、空中に残る薄緑色の煙と、俺の嗅覚まで届く異様な臭気は消えない。

……そういうことか。

事故ではなく、意図的な攻撃だ。コペルは自分の意思に基づいて《実》を斬り、破裂させた。

この1時間、共に戦った元ベータテスターは、俺を見てもう一度言った。

「……ごめん」

そのアバターの向こうに、いくつものカラー・カーソルが出現するのが見えた。右にも、左にも、後ろにも。煙に引き寄せられてきたリトルネペント達。このクエストにPOPしていた個体が残らず集まろうとしているに違いない。総数は20か30を超える。

囲みを破れても、ネペントの最高移動速度は外見から想像されるよりも遥かに速く、引き離す前に他のモンスターにターゲットにされてしまう。もはや離脱は不可能。

最初の一瞬だけ、自殺を試みたのかと思ったが、俺にはコペルの行動を見てすぐにわかった。

……俺をモンスターに喰わせる魂胆か。

敢えて《実》を割り、周囲からネペントを呼び集める。しかる後に自分だけは《隠蔽スキル》で身を隠す。30匹を超えるモンスターのターゲットは全て、俺に集まる。古典的な手段であるが、これは……。

《モンスタープレイヤーキラー(MPK)》だ。

だとすれば、動機も明らか。俺が先刻拾ったクエストのキーアイテム《リトルネペントの胚珠》を奪うため。俺が死ねば、装備中またはポーチに入れてるアイテムはその場にドロップする。ネペントの集団が再び散った後、コペルは《胚珠》を拾い、村に戻ってクエストをクリアできる。

……最初から、これが狙いだったのか。

コペルは現実に眼を背けたわけじゃない。むしろその逆。早々にデスゲームという現実を認識し、プレイヤーとして舞台に上がった。他のプレイヤーを騙し、出し抜き、奪い、自分が生きるために俺を利用した。

まんまと罠に掛けられ、殺されようとしているのに、冷静な感情を保っていた。その理由は、俺の、目覚めた時から今までの経験か、それともコペルの計画に存在する《穴》に気づいたかのどちらか。

いずれにせよ、俺もコペルを利用するという形でパーティーを組んでいたのだ。本人にその気がなかったとしても、俺にはどうでもよかった。しかし、これは俺の考えていた利用とはあまりに掛け離れていた。

「……裏切り……久しぶりに味わう感覚だ」

聞こえてるかどうかは不明だが、俺は離れた茂みに向かって語りかけた。

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