Side Story
少女怪盗と仮面の神父 30
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テの隣に立ち、蒼白い顔を覗く。
「私も無い、です。……昼間、置き去りにしてすみませんでした」
……きっと大丈夫だと思ってた。
しかし、いざ改めて無事な姿を見ると、「良かった」と「申し訳ない」が同じだけ溢れて接し方に戸惑う。自分を襲った斧の持ち主が暗殺者だと知った後で化け物染みた強さのマーシャルが死にかけている姿を直視してしまっては、尚更だ。
「……数刻の間に随分しおらしくなったな。まぁ、自らの意思で反省に至ってくれたんなら構わないさ。ああ、そうだ。あの食料はリアメルティ伯爵宅の玄関先に届けておいたから、君達で食べてくれ。君に貰ったと報告しようものなら我が主サマが不機嫌になるのは目に見えてるし、俺は受け取れない。君が関係者全員に手料理を振る舞ってくれるって言うなら、話は別だけどね」
目を合わせようとせずに肩を震わせるミートリッテの頭をぽんぽん叩いて、薄茶色の目がアーチ状に細められた。思い遣りに満ちた仕草が、逆に怪盗の心臓を締め付ける。
彼もマーシャルと同じ……自分の所為で殺されていたかも知れないのに。
(……此処で私が謝ったって、どうにもならない。土下座して泣き喚いて赦しを願って……それでマーシャルさんが助かる? 違うでしょう?)
拳を強く握り、ぐっと奥歯を噛み締めて、ベルヘンス卿を正面に見据える。
(現状理解だ。ぼけーっとしてる場合じゃない。頭を働かせろ。情報を集めて考えるんだ。私は今、誰に何を求められていて、これから何をするべきなのか。考えろ!)
突然目の色を変えて向き合ったミートリッテに首を傾げ……何かを感じ取ったらしい青年も、静かに見つめ返した。
「関係者って、何十人居るんですか? 私、未だに何がどうなってるのか、さっぱり解らないんですが」
「悪いけど、俺も具体的な人数は把握してない。仮に知ってても、情報開示の許可が下りなければ答えられないよ。現時点で教えられる事があるとしたら……そうだな。君を最初に眠らせたのは、其処にずらっと並んでる奴らだ。とか?」
「へ?」
既に聞いた後かも知れないが、と言ってベルヘンス卿が指し示したのは、二人を囲む十人の軍属騎士達。
「貴方が言ってた「アイツら」って、自警団じゃないんですか?」
「ネアウィック村の自警団とアイツらとでは格が違うよ。自警団員が留守中の婦人宅に忍ぶなど、天地がひっくり返ってもありえないね。万が一そんな団員が居ても、翌日以降その人物は村に存在しない」
「……ますます意味不明です。貴方のほうが格上に見えるのに、貴方は自警団を同等か、上に見てるの?」
自警団とは、村の有志で作った自衛組織。基本の装備費用や給料等は最低限の防衛費として領主から支給されているらしいが、団員はみんな一般民だ。
軍属騎士のハウィス達とそっくりな白っぽい騎士服
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