Side Story
少女怪盗と仮面の神父 30
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してるし、二人共水浸しだし! こっちは心臓が潰れるかと思ったんですからね!?」
「アンタはそりゃ平気かも知れんが、そいつはちょっと勘違いした努力家なだけで、普通の年頃の娘なんだぞ!? 全身ずぶ濡れで抱き合うとかも、もう少し気を遣え! ただでさえキレてるハウィスをこれ以上暴走させんな! 誰が止めると思ってんだ、誰が!」
一同も一斉にアーレストへ噛み付く。
「「「お嬢に何かあったら、俺達全員が姐さんに殺されるんだぞ!? 幾らお嬢がべらぼうに可愛くても、命と性に関わる手出しだけは絶対に止めてくれ! 本当、マジで真面目に頼む!」」」
「だから、それもあんた達が言えた義理じゃないでしょうが! マーシャルさんの演技も含めて、あんた達自身が下品な言葉とイヤらしい態度で私を脅迫したクセに!」
「「「「あ」」」」
「……あ?」
どさくさ紛れの阿呆な訴えに怒鳴り返した途端、ミートリッテに視線を集めた騎士達の顔が真っ白になる。
「………………ねぇ、クナート?」
「ひっ!?」
背後で急速に膨れ上がる冷たい殺気。
氷水を浴びせかけられた錯覚に、思わずその方向へ足先を向けると……艶やかに微笑んだハウィスが、隣に立つクナートの喉元へ、切れ味良さげな刃をヒタリと添わせていた。
「私、マーシャルと私を人質役にしてシャムロックを脅した……としか聴いていないのだけど。あの子の演技を含めた下品な言葉とイヤらしい態度って、どういう内容? 一挙手一投足、一言一句違わない、詳しい状況と台詞を此処で再現してくれないかしら? 今、直ぐに。」
すぅ……と薄く開いた群青色の虹彩が、激しい怒りを湛えて鋭く光る。
「あー……えーっと、だな……」
剣先は河に構えたまま、あさっての方向へ目を泳がせるクナート。
どうやら海賊達の下品な言動は、ハウィスも与り知らぬ物であったらしい。
(なんか……いつものハウィスっぽい?)
猛吹雪を招きそうな冷気には慄いたものの、義母に抱く高潔な印象を彼女に見出したミートリッテは、少しだけ安心した。
「仲が良いですよね、皆さん。ですが今は、落ちた二人の迅速な引き上げを優先したほうが賢明ですよ? 一人は深傷を負っている筈。水に浸けておくのは非常に危険です」
「! 貴方、誰がどんな状態で落ちて来たのか判ったの? この暗い中で!?」
喧騒の最中に黙々と袖を捲っていた神父へ、ハウィスが驚きの視線を走らせる。
アーレストは唇の両端をやんわり持ち上げ……
「あっ、ちょっと!」
彼女の脇を擦り抜けて、止める間も無く河へ飛び込んだ。
「……着水直後まで、河なんか見てすらいなかったわよね? 彼……」
「……見てなかったな」
「あなた達、落下した影を見極められた? 落ちたのが人間だと確信できた? 私は単に
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