第九話 動揺
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きたせいか、疲れが出始めている。
あー、腕痛い。肩張ってんな。ダリィ。休みたい。帰りてぇよ。
……昔なら、小5の夏までならそんなこと言ってささっと誰かに代わってたよな。
無理、疲れた、面倒くせえ。
あの頃はそんなことは簡単に言えたのに。
今は言えない。言いたくない自分がいる。
『大きくなったらコウはどんな大人になるんだろうね?』
見てるか若葉。
ほんのちょっとだけ、俺は大きくなっただろ?
『あと一人、あと一人!!!』
大歓声があがった観客席を見上げて、そして見つけた。
見てろよ、青葉。
約束はちゃんと守るから。
そう心の中で呟き大きく振り被って、そして腕を振るう。
指先からボールが離れた瞬間、まるで時が止まったかのような感覚に陥った。
スローモーションの世界。ゆっくり、ボールは赤石めがけて飛んでいく。
静止した世界で打者がボールが通過した後にバットをゆっくり振るうのが見えた。
『空振り!!! そして、今のが……160キロ?? 信じられません。ここに来ていまだに衰えない球速。そして球威。凄すぎます』
赤石を見ると次はチェンジアップ。青葉直伝の球。
絶対的な決め球を生かす為の遅めの球。
赤石のサインの通り、チェンジアップを投げた。
空振り。ストレートとの落差があるこの球を打つのはかなり難しいだろうな。
東や三島ならバットに当ててきそうだけど。
『あと一球! あと一球! あと一球!』
沸き起こる大歓声。
まるで球場全体が揺れているかのような、震度が伝わってくる。
俺は深呼吸をすると、打者と赤石を見つめて、大きく振り被る。
全ての想いをこの一球に込めて赤石めがけて放る。
見てるか、若葉? 俺はここにいるぜ。
心の中でそう告げながら顔を上げると。
俺が投げた球は赤石のキャッチャーミットに収まっていた。
『ストライク!!!!! 空振り三振! そして、完全試合達成。
樹多村やりました。甲子園2度目の完全試合達成です』
こうして準決勝も無事勝ち上がった俺達星秀学園は決勝に進むことになった。
この日は校歌斉唱が終わるのと同時に雨が強く降り始めて。
「危ねえ、危ねえ。セーフ」
あとちょっとでずぶ濡れになるところだった。
試合早く終わらせてよかった。
ヒーローインタビューの後、ロッカールームでそんななーんて思っていると。
「馬鹿野朗! 最後サイン無視してど真ん中投げやがって!
空振りしたからいいけど、ヒヤヒヤしたぞ!」
赤石に怒られた。
「悪い、悪い。雨降りそうだったから」
「勝ったからいいけどよ、打たれたらどうすんだ?」
俺の言葉に呆れ顔する赤石。
「打たれれるとは思わな
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