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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十五話 伯父・甥
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ーンに伯父上が映った。私だとは思わなかったのだろう。驚いた表情をしている。何を言うべきか、そう考えていると伯父上の方から話しかけてきた。
「ヘル・ファルマーか、フェルナーより卿の事は聞いている。わしがオットー・フォン・ブラウンシュバイクだ」
低く、太く響く声だった。懐かしい声……。
伯父上……。
「ギルベルト・ファルマーです」
何も言えなくなった。
「……」
「……」
私は伯父上を伯父上は私を見ている。しばらくの間沈黙があった。
「卿とは一度話をしたいと思っていたのだが、ちょうど良い時に話すことが出来た。これから先は忙しくなりそうなのだ」
「……」
「もう知っていると思うが、わしは今度反乱を起す事にした。つまらぬ反乱だがこれでも門閥貴族としての意地があるのでな。我ながら酔狂な事だ」
幾分自嘲するかのような口調だった。無理も無い、伯父上自身、不本意な反乱なのだろう。
「私にお手伝いできる事が有りましょうか?」
思わず声が掠れた。
「……いや、無い。これは貴族だけの宴なのだ、残念だが卿の協力は受けられん。気持ちだけは有難く受け取っておく」
「……」
伯父上が戸惑いがちに口を開いた。
「ヘル・ファルマー、わしには甥がいた。馬鹿な甥であったがかわいい甥でもあった。病気で死んでしまったが、あれが死んだときは随分と悲しんだものだ」
「……」
「だが、今では死んでくれて良かったと思っている。こんな馬鹿げた反乱に巻き込む事は出来んからな」
「……」
「生きていれば卿と同じくらいか、何処となく卿に似ているようだ。まあ器量は卿には及ばぬが」
そう言うと伯父上は苦笑した。おそらく昔の私を思い出しているのだろう。その通りだ、昔の私は特権意識に凝り固まった愚か者だった。
「ヘル・ファルマー、もっと早く卿に会いたかったものだ」
「私ももっと早く公にお会いしたかったと思います」
「上手く行かぬものだな」
上手く行かぬ……。傍にいるときはどうにもならぬ愚か者で迷惑ばかりかけていた。少しましになった時には傍に居る事を許されぬ立場になっている。一体自分は何をしているのか……。愚かさは変わらぬということか……。
「……」
言葉が途切れた。心なしか伯父上の眼が潤んでいるように見える。それとも潤んでいるのは私の眼のほうだろうか。
「わしは皆の所に戻らねばならん。卿と話せて心残りも消えた、思う存分戦えそうだ。ヘル・ファルマー、達者で暮らせ。わしに武運あらば、また会うことも出来よう、さらばだ」
「公爵閣下も御自愛ください」
伯父上がゆっくりと頷いた。そしてスクリーンが真っ暗になる。もう、会う事は出来ないだろう。話したい事は他にもあったはずだ。だが何も話せなかった。なんと自分は愚かなのか
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