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小才子アルフ〜悪魔のようなあいつの一生〜
幕間 フレーゲル男爵の憂鬱
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ことは明白であった。
 「畏れ多くも皇帝陛下直々のご指名、よもや拒むことはできぬ。かくなるうえは心して準備を整え、腐肉漁りの輩の目を抜く働きを奴らに見せつけてやるほかはない。ヨアヒム、ぬかるなよ」
 「はい、伯父上」
 万に一つの瑕疵でもあれば己の破滅は無論のこと、ブラウンシュバイク一門全体が滅亡の危機に瀕することになる。用件を伝え終わったブラウンシュバイク公の姿が消えた通信スクリーンの前で、フレーゲルは悪辣な罠に激しい怒りを覚えていた。
 だが、フレーゲルは怒りによって生じた力をより悪辣な陰謀、陥穽を仕掛ける方向に向けることはしなかった。
 「よかろう、どこの愚か者か知らぬが私を侮ったことを後悔させてくれよう」
 「閣下」
 「心配するなシューマッハ、このような罠一つ越えられぬ私ではない。誰か酒を持て!祝い酒だ。兵士の無事の帰還と我が前途を祝してのな!」
 シューマッハやその場に居合わせた全員はもとより、屋敷中の全ての使用人に杯を取らせたフレーゲルは翌夕、何ら臆することなく晩餐会という名の戦場に向かった。
 「土産話を楽しみにしておれ!明晩は夜を徹して飲もうぞ!」
 『ヨハン・フォン・クロプシュトックごときに遅れを取るものか』
 帝国随一の名門の連枝の誇りにかけても、数年前までは日蔭者だったクロプシュトック侯息ごときに負けられぬ。給仕でも女給でも務めてくれよう。
 地上車の後部座席に揺られながら、フレーゲルは闘志を滾らせていた。
 このとき、フレーゲルは予想もしていなかった。罠の先に貴族としていま一段の高みに登る道が隠されていることに。
 『帝国暦四七六年十二月二十四日。帝国は、一人の名臣の誕生の瞬間を迎えようとしていた』
 木陰から己の仕掛けた舞台を観劇する運命を操る者──再び医師ヴィクトール・フォン・フランケンシュタインの姿に戻りモノローグを朗読する悪魔と旅立ちの歌を演奏する愉快な僕たち──もフレーゲルたち操られる者も、翌朝の光を見る頃には数世紀にわたって洗練された血の予想以上の力に驚愕することになるのである。
 
 火は、夜中過ぎに点された。
 畏れ多くも皇帝陛下の給仕で食事をする栄誉に浴した帰還兵たちは真新しい礼服に袖を通した喜びや多くが初めて目にする壮麗な新無憂宮の美──彼らが通された建物は軽格の者が通されるいわば前庭の東屋のようなもので、食堂をはじめとする室内の装飾も簡素であったのだが──に感動するどころか緊張で料理人が腕によりをかけた料理の味もまるで分からぬ、最後の晩餐に臨む死刑囚のごとき有様であったが、夜も更け酒が入ると徐々に緊張もほぐれてきたようであった。
 「叛徒と申す者どもは女人を大切にせぬことこの上なく、戦場に駆り立てて得々としておる始末。私めを撃墜した敵のパイロットの女が撃墜され、宇宙に吸い出
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