第二部 WONDERING DESTINY
エピローグ 〜Stairway to Eternal〜
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気分の転換が早いというか」
「というより、理性と本能が潔いまでに分離しているというか」
「我の眼 も曇ったものよ……」
花京院他二名が、多情に戯れるスタンド使いをそう評すると同時に、
「やれやれだぜ」
「やれやれだわ」
承太郎とシャナが深い嘆息と共に言葉を漏らした。
「ところでよ、ジジイ。まだ出航までには時間があるんだろ?」
賑やかな背後を無視し承太郎がジョセフに向き直る。
「あぁ、荷物の搬入がまだじゃし、計器類の最終チェックもあるしな、
あと小一時間といった所か」
「フッ、なら、オレはチョイと出てくるぜ。香港の街並みが名残惜しいんでな」
そう言うと承太郎は、船倉から持ち出していたのか埠頭の隅に止めてある、
レーサータイプのV型4気筒バイクに歩み寄って跨りキーを捻る。
空気の振動と共に響き渡るけたたましい排気音。
無頼の貴公子は慣れた手つきでアクセルを噴かし、エンジンの調子を確かめる。
「あ……」
いつもそうだが予測のつかない行動、
傍にいたと想うともう次の瞬間には
風のように遠くへ行ってしまう。
「……」
たったの一時間なのに、またすぐ逢えるのに、
何故か無性に寂しいという気持ちが冷気のように胸の中で吹き渡る。
その少女の許に。
「どうした? 早く来いよ。シャナ」
承太郎が当たり前のようにそう言い、
一番好きな微笑と共に手を差し出した。
「――ッ!」
寂寥とした冷たさが一瞬で消え、
温かいナニカで胸がいっぱいになった。
「う、うん!」
即座に駆け出し、大地を蹴ってリアシートに飛び乗る。
麝香の沁みた制服の匂いと広い背中から伝わる体温。
たったそれだけのものが、歓喜と高揚を否応なく呼び覚ます。
「しっかり掴まってろよ」
短くクラッチを切る音がし車体が急加速して走行を始めた。
「お、おい承太郎! 日本ではないがヘルメットは!」
快音に紛れて届くジョセフの言葉を承知していたように、
「封絶」
無頼の貴公子が一言呟き、
同時に背後で掲げた少女の指先から紅蓮の火の粉が一抹弾け、
流れる無数の紋字が動く車体の周囲を包み込んだ。
コレで二人の存在はスタンドと同じように知覚されず、
自由に突っ走るコトが可能となる。
「……やれやれじゃのう」
遠ざかっていく紅い陽炎を見据えながらジョセフは嘆息を漏らしつつも、
50年前、妻のスージーをサイドに乗せて、
ヨーロッパ中を廻った事を想い出し穏やかな笑みを浮かべた。
路面の標識がブレた残像となって背後に駆け抜ける。
街路を歩く人の群が帯状に流れていく。
目まぐるしく過ぎ去る風景の中、
バイクは他の車輌の間を縫うように疾走し速度を微塵も落とさない。
胸を圧するような逆風に
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